アトリエで完成した作品をスマートフォンで撮影する作家

アーティストのためのSNS発信の基本|何を・どこで・どう続ける?

アトリエで完成した作品をスマートフォンで撮影する作家

「SNSで発信したほうがいいのは、なんとなく分かっている。でも、何を投稿すればいいのか分からない」「フォロワーもまだ少ないし、続けても意味がない気がしてしまう」「発信が苦手で、気づけば更新が止まっている」——。これは、わたしたちが作家さんやハンドメイド作家さんから、これまでに何度も聞いてきた言葉です。

絵を描くこと、ものをつくることには夢中になれるのに、それを外に向けて発信するとなると、とたんに手が止まってしまう。そんな方は、決して少なくありません。「発信が上手な作家」と「発信が苦手な作家」がいるのではなく、多くの作り手が、多かれ少なかれ同じところで立ち止まっているように思います。

この記事では、これから発信をはじめたい方、はじめたばかりでうまくいかない方に向けて、「なぜ発信が必要なのか」「どこで、何を、どう発信すればいいのか」を、作家目線でできるだけ具体的にお伝えします。上手さや正しさよりも、自分のペースで無理なく続けられることを大切にしながら読んでいただけたらうれしいです。

なぜ、作家に発信が必要なのだろう

まず最初にお伝えしたいのは、「発信しないと売れない」「発信していない作家は遅れている」ということでは、決してないということです。発信をしなくても、口コミや個展、取引先とのご縁だけで活動を続けている作家さんもたくさんいらっしゃいます。発信は、あくまで選択肢のひとつです。

そのうえで、それでも発信という手段が持つ力について、少しだけお話しさせてください。作品は、つくった瞬間には、まだ誰の目にも触れていません。どんなに丁寧に、想いを込めてつくられたものでも、誰かに見てもらえなければ、その想いは届かないままになってしまいます。SNSは、遠く離れた場所にいる人、これまで出会うはずのなかった人に、作品と想いを届けるための小さな窓のようなものです。

実際、Instagramを運営するMeta社が発表した数字では、日本国内の月間利用者数は3,300万人にのぼるとされています。X(旧Twitter)やYouTubeも含めれば、日常的にSNSに触れている人の数は非常に多く、ギャラリーや店頭だけでは出会えなかった層に、作品を知ってもらえる可能性が広がっています。

また、minneやCreemaといったハンドメイド作品の販売プラットフォームでも、SNSを併用して発信している作家の方が、作品への反応や販売につながりやすい傾向にある、という趣旨の発表がされています。これは「発信が上手だから売れる」という単純な話ではなく、作品の背景にある物語やつくり手の人柄が伝わることで、見る人の気持ちが動きやすくなる、ということなのだと思います。

発信は、作品を宣伝するためだけのものではありません。同じように制作に励む作家仲間とつながったり、思いがけない依頼やご縁が生まれたり、自分の制作を振り返るきっかけになったりもします。「発信しなければ」という義務感からではなく、「そういう可能性もあるのだな」というくらいの、軽やかな気持ちで捉えていただけたらと思います。

どこで発信する? SNSごとの向き不向き

「発信したほうがいいのは分かった。でも、どのSNSを使えばいいの?」というのが、次に多いお悩みです。すべてのSNSに手を出す必要はありません。それぞれの特徴を知ったうえで、自分の制作スタイルや性格に合ったものを、ひとつかふたつ選ぶことをおすすめします。

Instagram | 写真でみせる作家に

Instagramは、写真や短い動画を中心に見せるSNSです。絵画やハンドメイド作品のように、「見た目」や「質感」が魅力の中心になる作品との相性がとても良く、多くの作家さんが最初の発信の場として選んでいます。フィード投稿でしっかりとした写真を残しつつ、ストーリーズでは制作途中のラフな様子を気軽に共有できるのも魅力です。「きちんと見せたい投稿」と「日常のつぶやきのような投稿」を使い分けられるのは、大きな強みだと感じます。

X(旧Twitter)| 言葉と考えを伝える作家に

Xは、文章での発信が中心のSNSです。制作の合間にふと浮かんだ気持ちや、作品に込めた想いを言葉にして伝えたい方に向いています。拡散力があり、同じ制作をする人たちとの会話が生まれやすいのも特徴です。ただし、情報の流れがとても速いため、「投稿しても埋もれてしまう」と感じやすく、続けるにはある程度の慣れが必要かもしれません。

YouTube | 制作の過程をじっくり見せる作家に

YouTubeは、制作過程をじっくりと動画で見せられるのが最大の魅力です。「完成品だけでなく、どんなふうにつくられているのかを見てもらいたい」という方に向いています。一方で、撮影・編集に時間がかかるため、制作の時間を圧迫してしまうこともあります。最近はショート動画機能もあり、以前より気軽に始めやすくなってきました。

SNS向いている作家特徴
Instagram写真・見た目で魅せたい方作品写真と日常を使い分けやすい
X(旧Twitter)言葉で想いを伝えたい方会話や拡散が生まれやすい
YouTube制作過程を見せたい方じっくり伝えられるが手間がかかる

どれかひとつが正解、ということはありません。自分が続けやすい場所を選ぶことが、なによりも大切です。もし迷ったら、まずはInstagramからはじめてみるのが取り組みやすいかもしれません。

何を投稿する? 投稿ネタの引き出し

「発信の場所は決まったけれど、何を投稿すればいいのか分からない」という声もよく聞きます。完成した作品だけを載せようとすると、投稿できる頻度はどうしても限られてしまいます。ここでは、投稿のネタになりうるものを、いくつかご紹介します。

  • 制作の途中経過(下描き、色を重ねている途中の様子など)
  • 完成した作品と、その作品に込めた想いや背景にある物語
  • 制作に使っている道具や画材、アトリエの様子
  • 制作のきっかけになった風景や出来事
  • 制作中に聴いている音楽や、ふと浮かんだ気持ち
  • 失敗してしまったことや、うまくいかなかった試行錯誤
  • 個展やイベントの準備の様子、当日の会場の雰囲気
  • 作品を見てくれた方からいただいた感想やエピソード

完成品だけでなく、途中経過や失敗談も、立派な投稿ネタになります。むしろ、そうした「まだ整っていない過程」にこそ、見ている人の心が動かされることも少なくありません。上手にできたところより、想いがこもっているところのほうが、人に伝わるものです。

また、「作品」そのものだけでなく、「つくっている人」の存在が垣間見える投稿は、フォローしてくれる方との距離をやさしく縮めてくれます。完璧に整えられた展示写真だけでなく、絵の具で汚れた手元や、制作の合間にふと目にした空の色など、日常のひとコマも大切な発信のひとつです。

無理なく続けるためのコツ

発信で一番むずかしいのは、実は「はじめること」よりも「続けること」だとよく言われます。張り切って毎日投稿をはじめたものの、数週間で更新が止まってしまう、というのはとてもよくあることです。ここで大切にしていただきたいのは、頻度よりも「無理のなさ」です。

頻度は、自分が苦しくならない範囲で決める

「毎日投稿しなければ」と自分を追い込む必要はありません。週に1回でも、月に数回でも、続けることのほうがずっと大切です。まずは「無理なく続けられそうな頻度」を自分なりに決めて、それを守ることから始めてみてください。もし更新が滞ってしまっても、それを責める必要はありません。また再開すればいいだけのことです。

完璧な投稿を目指さない

「ちゃんとした写真じゃないと」「文章がうまくまとまらないと投稿できない」と考えてしまうと、投稿のハードルはどんどん上がってしまいます。少しくらい構図が整っていなくても、文章がつたなくても、想いが伝わればそれで十分です。完璧を目指すよりも、まず出してみることのほうが、発信を続けるうえでは大きな力になります。

撮りだめ・書きだめをしておく

制作に集中しているときに、いちいち投稿のことを考えるのはむずかしいものです。制作の合間にふと手が止まったときや、道具を片づけているときなど、隙間の時間に写真だけ撮っておいて、投稿はあとからまとめて行う、という方法もおすすめです。「投稿する」という行為と「制作する」という行為を、無理に同時にやろうとしないことが、続けるコツのひとつです。

発信は、作品と同じように、育てていくものだと思います。うまくいかない日があってもいい。少しずつ、自分らしいペースを見つけていけたら、それでいいのです。

届け方の基本 | ハッシュタグ・プロフィール・世界観

最後に、せっかくの投稿を、より多くの方に届けるための基本を、いくつかご紹介します。テクニックというよりも、ちょっとした心がけに近いものです。

ハッシュタグは、作品と自分を説明する言葉

ハッシュタグは、検索されるためだけのものではなく、「自分がどんな作家なのか」を説明するラベルのようなものでもあります。使っている画材や技法(たとえば「油絵」「アクリル画」)、作品のテイスト(「動物イラスト」「風景画」など)、活動地域などを、いくつか組み合わせて使ってみてください。数を多く付けすぎるよりも、自分の作品に合ったものを丁寧に選ぶほうが、興味を持ってくれる方に届きやすくなります。

プロフィールは、はじめましての名刺

投稿を見て興味を持ってくれた方が、次に見るのがプロフィール欄です。どんな作品をつくっているのか、どんな想いで制作しているのか、他にどこで作品を見られるのかが、短い言葉でも伝わるようにしておくと、その先の販売サイトや個展の情報にもつながりやすくなります。長い自己紹介文である必要はありません。ひとことで「自分らしさ」が伝わる言葉を、じっくり考えてみてください。

世界観は、少しずつ一貫させていく

投稿を重ねていくと、写真の雰囲気や言葉づかいに、自然とその人らしさがにじみ出てきます。無理に統一感を演出しようとしなくても大丈夫です。ただ、同じ光の当て方で撮る、似たトーンの言葉を選ぶ、といった小さな積み重ねが、見返したときに「その人らしいアカウント」として伝わっていきます。一貫性は、気負ってつくるものではなく、続けるうちに自然と生まれてくるものだと思います。

こんなときどうする? よくあるお悩みQ&A

ここまで発信の基本をお伝えしてきましたが、実際にやってみると、ふとした瞬間に不安になったり、迷ったりすることも多いものです。最後に、作家さんからよくいただくお悩みに、いくつかお答えします。

いいねやフォロワーが増えなくて、続ける意味を見失いそうです

数字は、目に見えるぶん気になってしまうものですが、いいねの数と作品の価値は、決してイコールではありません。今は反応が少なくても、投稿を積み重ねたアカウントは、そのまま「その作家の歩みの記録」になっていきます。いつか誰かがふと過去の投稿までさかのぼって見てくれたとき、そこに積み重ねられた制作の軌跡そのものが、あなたらしさを物語ってくれます。数字よりも、「誰かひとりに届けばいい」というくらいの気持ちで続けてみてください。

他の作家さんの発信と比べて、落ち込んでしまいます

SNSを開けば、写真も文章も洗練された、素敵な発信をしている作家さんがたくさん目に入ってきます。比べてしまう気持ちは、とても自然なことです。ただ、その方にもきっと、今のかたちにたどり着くまでの試行錯誤があったはずです。比べる相手は、他の誰かではなく、少し前の自分でじゅうぶんです。「先月より少し続けられている」「前より投稿することへの抵抗が減った」——そんな小さな変化を、自分で見つけてあげてください。

作品にネガティブなコメントがついたら、と考えると怖くて投稿できません

これは、発信を続けるうえで多くの作家さんがぶつかる壁のひとつです。もし心ない言葉に出会ってしまったときは、無理に受け止めようとせず、コメント機能を制限したり、その言葉から距離を置いたりしてかまいません。発信は、自分の心をすり減らしてまで続けるものではありません。安心して発信できる環境を、自分自身でつくっていくことも、長く続けるためにはとても大切な視点です。

何を投稿しても反応がなく、需要がないのかと不安になります

投稿を始めたばかりの頃は、反応が少ないのはむしろ自然なことです。SNSのアルゴリズムは、投稿を重ねたアカウントほど多くの人に届きやすくなる仕組みになっていることが一般的に知られています。すぐに結果が出なくても、それは作品の価値がないということではなく、まだアカウントが育っている途中、というだけのことも多いのです。焦らず、ご自身のペースで積み重ねていってください。

まとめ

発信は、上手にできるかどうかよりも、自分らしく続けられるかどうかがなによりも大切です。最初からすべてを完璧にこなす必要はありません。今日できそうなことをひとつだけ、たとえば制作途中の写真を一枚だけ撮ってみる、そんな小さな一歩からで十分です。

poppy questでは、発信が苦手な作家さんが、自分のペースで無理なく一歩を踏み出せるよう、作家や作り手でもあるスタッフが、投稿のご相談や発信の仕方についてのサポートも行っています。「何から始めたらいいか分からない」という段階からで大丈夫です。お気軽にご相談ください。

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