作家のための、むずかしくないホームページの作り方

Instagramに新しい絵をアップしたら、その日はたくさんの「いいね」やコメントがついた。うれしくて何度も画面を開いてしまう。けれど数日経てば、その投稿はタイムラインの奥へ流れていって、誰の目にも留まらなくなる。そんな感覚を、覚えのある作家さんは多いのではないでしょうか。
「いつかちゃんとしたホームページを作らなきゃ」——そう思いながら、気づけば何年も経ってしまっている。展示会の案内も、作品の紹介も、すべてSNSの投稿に頼りきり。誰かに「作品、まとめて見られるところありますか?」と聞かれたときに、「えっと、インスタを遡ってもらえれば……」としか答えられなくて、少し気まずい思いをしたことがある人もいるかもしれません。
ホームページの必要性は、なんとなくわかっている。でも、「自分はエンジニアじゃないし」「専門知識がないと作れないんじゃないか」「時間もお金もかかりそう」と、後回しにしてしまう。今日は、そんな作家さんに向けて、むずかしくないホームページの作り方について、おなじ作り手の立場からお話ししたいと思います。
なぜ、作家にホームページが必要なんだろう
SNSは、いまを生きる作家にとって欠かせない発信の場です。描いた瞬間の熱量をそのまま届けられるし、遠く離れた人とも気軽につながれる。けれどSNSには、ひとつ大きな性質があります。それは「流れていく」ということです。
投稿は新しいものに押し流され、数日、数週間もすれば、よほど検索しない限り再び目にすることはありません。加えて、SNSの運営方針や表示のしくみは、プラットフォーム側の都合で度々変わります。総務省の情報通信白書でも、個人・事業者を問わずSNSの利用は年々広がっていると報告されていますが、それはあくまで「そのSNSのアカウントを持つ人だけに向けた発信」であることに変わりありません。検索エンジンで作家の名前や作品名を調べても、SNSの投稿そのものは基本的に見つかりにくく、フォロワーではない人には届きにくいという特性があります。
たとえば、あなたの作品を気に入ってくれた人が、あとから「あの作家さん、名前なんだったかな」と思い出して検索する場面を想像してみてください。SNSのアカウント名を正確に覚えていなければ、たどり着くことはむずかしいものです。けれどホームページがあれば、名前や作品のキーワードで検索したときに見つけてもらえる可能性が生まれます。これは、SNSだけでは補いきれない役割です。
| SNS | ホームページ | |
|---|---|---|
| 役割 | 今の想いをすぐ届ける窓 | 作品と歩みをまとめておく家 |
| 見つかりやすさ | フォロワー中心。時間とともに流れていく | 検索や紹介から、いつでもたどり着ける |
| 伝えられる情報量 | 一投稿ずつ、断片的 | プロフィールや経歴もあわせて、まとまった形で |
誤解のないように付け加えると、これはSNSをやめてホームページに切り替えよう、という話ではありません。SNSでの日々の発信と、ホームページというまとまった居場所は、対立するものではなく、両輪です。SNSで日々の制作の様子や新しい作品を届けながら、その入り口の先に、いつでも訪れられる「家」があることで、それぞれの良さが活きてきます。
一方、ホームページはちがいます。一度つくれば、そこはずっと「自分の作品の家」として残り続けます。誰かがふと「この作家さん、他にどんな作品を作っているんだろう」と気になったとき、URLひとつで、これまでの歩みや想いにたどり着ける。SNSが「通りすがりの人に手を振る窓辺」だとしたら、ホームページは「いつでも招き入れられる、あなたの家」のようなものです。
そしてもうひとつ、大きいのが「信頼」の話です。展示のお声がけや制作の依頼を考えている人は、SNSのDMだけで踏み出すには、少し勇気がいります。でも、プロフィールや実績、作品の一覧がきちんと整理されたホームページがあれば、「この人はちゃんと活動している作家さんなんだ」と感じてもらいやすくなります。問い合わせるという小さな一歩を、相手が踏み出しやすくなる。それが、ホームページという場所の持つ、静かだけれど確かな力です。
「むずかしそう」の正体をほどいてみる
「ホームページを作る」と聞くと、専門的なプログラミングの知識や、デザインの技術、それなりの費用が必要なイメージが浮かぶかもしれません。少し前までは、たしかにそのとおりでした。ホームページを持つには、制作会社に依頼するか、自分でコードを一から書くくらいしか方法がなかった時代もあります。
けれど今は、状況がずいぶん変わりました。専門知識がなくても、パーツを組み合わせるようにしてホームページを作れる「ノーコード」のホームページ作成サービスが、いくつも登場しています。文字を入力して、写真を選んで、配置をドラッグで整える。そんな感覚で、自分の作品ページを形にできるようになっているのです。
たとえば、テンプレートを選ぶところから始められるようなサービスや、写真作品の見せ方に強みを持つポートフォリオ向けのサービスなど、いろいろなタイプのものがあります。それぞれ得意な雰囲気や機能、料金の仕組みが異なるので、「これが絶対おすすめ」と一つに決めつけるのは、じつはあまり得策ではありません。自分の作品の色合いや雰囲気、どのくらい手をかけたいかに合わせて、いくつか触ってみて、しっくりくるものを選ぶくらいの気持ちで大丈夫です。
大切なのは、「エンジニアじゃないと作れない」というのは、今ではもう過去の話になりつつあるということ。もちろん、細かなカスタマイズをしようとすると専門的な知識が必要になる場面も出てきますが、「まず自分の作品を紹介するページを持つ」という最初の一歩は、思っているよりずっと近くにあります。
費用が心配、というときは
ホームページ作成サービスの多くは、無料から試せるプランや、月々わずかな金額で使えるプランを用意していることが多いようです。もちろんサービスによって仕組みや金額はさまざまなので、断定はできませんが、「まずは無料の範囲で触ってみる」ということ自体は、多くのサービスでできるようになっています。いきなり大きな金額を払う前に、試しながら自分に合うかどうかを見極められるのは、心強いところです。
時間がない、というときは
「制作の合間にそんな時間はとれない」という声もよく聞きます。けれど、最初から完成形を目指す必要はありません。休憩時間の少しずつ、プロフィール文を書く日、作品写真を選ぶ日、と分けて取り組むだけでも、着実に形になっていきます。テンプレートを使えば、レイアウトを一から考える手間も省けます。
更新がむずかしそう、というときは
公開したあとの更新についても、身構えなくて大丈夫です。多くのノーコードサービスは、最初にページを作ったときとおなじ操作感で、あとから写真を差し替えたり、文章を書き直したりできるように作られています。特別な知識がなくても、日々の管理が続けられるようになっているのが、こうしたサービスの大きな利点です。
最低限、載せておきたい5つの窓
「じゃあ、何を載せればいいの?」というのも、よく聞かれる悩みです。あれもこれもと欲張ると、かえって手が止まってしまうもの。まずは、次の5つがあれば、訪れた人が「この作家さんのこと、なんとなくわかった」と感じられるページになります。
- プロフィール——どんな想いで作品と向き合っているか、簡単な経歴とあわせて。堅苦しい文章でなくて大丈夫です
- 作品ギャラリー——これまでの作品を、写真でまとめて見られる場所。すべてを載せなくても、代表的なものから少しずつで構いません
- 実績・経歴——展示歴や受賞歴、掲載歴など。まだ少なくても、正直に、今ある分だけ載せれば十分です
- お問い合わせ導線——メールフォームやメールアドレスなど、連絡を取れる方法をひとつは用意しておく
- SNSリンク——InstagramやXなど、普段発信している場所へのリンク。ホームページとSNSは対立するものではなく、行き来しあう関係です
ここで大事にしてほしいのは、どれも「今の自分にできる範囲」でいいということです。実績が少ないから恥ずかしい、プロフィールが書けない、と手が止まってしまう作家さんもいますが、今の実績や今の言葉で十分に、誰かの心には届きます。ホームページは、完成させてから公開するものではなく、育てていくものだと考えると、少し気が楽になるかもしれません。
もし文章を書くのが苦手だと感じるなら、気負わず、誰かに話しかけるような言葉で書いてみるのがおすすめです。「なぜ絵を描き始めたのか」「どんな時間を大切にしているか」——そんな問いに答えるように綴るだけで、あなたらしいプロフィールになっていきます。上手な文章である必要はありません。
完璧じゃなくていい。まずは、1ページから
「ちゃんとしたものを作らなきゃ」という気持ちが、かえって足かせになることがあります。デザインにこだわりすぎて手が動かなくなったり、全部の項目を埋めようとして疲れてしまったり。でも、最初から完璧なホームページを持っている作家さんなんて、じつはほとんどいません。
プロフィールと、作品を数点並べたギャラリーと、連絡先。極端な話、それだけの1ページからでも、十分にスタートは切れます。まずは公開してみて、気になるところがあれば、そのつど少しずつ直していけばいい。育てながら、自分の家をととのえていくくらいの気持ちで、ちょうどいいのです。
「いつか完璧なものを」より、「今できるものを、まず一つ」。
気になる箇所が出てきたら、そのつど直せばいい。それがホームページの良いところでもあります。紙のパンフレットとちがって、一度印刷したら変えられない、ということがありません。今日の自分にできる分だけ形にして、明日の自分が気づいたことを、また少しずつ足していく。そんなふうに、気長につきあっていけるものだと思うと、肩の力が抜けませんか。
そう考えると、後回しにしていたホームページ作りが、ぐっと近づいて見えてくるのではないでしょうか。今日決めて、明日すぐに公開する必要もありません。まずは触ってみる、テンプレートを眺めてみる、自分の作品写真を数枚選んでみる。そんな小さな行動からで、じゅうぶんです。
poppy questも、おなじ作家として
poppy questも、油絵を描く作家が立ち上げたブランドです。だからこそ、「ホームページを作りたいけれど、何から手をつけていいかわからない」という迷いは、他人事ではありません。作り手としての気持ちと、伝える側としての工夫と、両方の目線を持ちながら、ホームページづくりや発信のサポートをおこなっています。
どんなサービスを使えばいいか迷っている段階でも、プロフィールの言葉が思いつかない段階でも、かまいません。「まだ何も決まっていないんですが」というところから、一緒に考えていくこともできます。ひとりで抱えてしまいがちな発信の悩みを、おなじ作家という目線で、そっと支えられたらと思っています。
ホームページを作ることは、ゴールではなく、これからの発信を続けていくための土台づくりです。作品を通して誰かとつながっていきたいという想いは、poppy questも、この記事を読んでくださっているあなたも、きっとおなじだと思います。だからこそ、遠くから一方的にすすめるのではなく、隣で一緒に手を動かすような形でお手伝いできたらと考えています。
まとめ
SNSでの発信は、これからも大切な場所であり続けます。けれど、それとは別に、自分の作品がいつでも変わらずそこにある「家」を持つことは、きっとあなたの作家活動を、もう一歩やわらかく支えてくれます。むずかしく考えすぎず、まずは1ページから。今日思い立ったこの気持ちを、小さな一歩に変えてみませんか。焦らなくて大丈夫です。あなたのペースで、少しずつ形にしていけば、それでじゅうぶんです。
poppy questでは、必要性は感じつつも一歩を踏み出せずにいた作家さんに向けて、ホームページ作りの最初のご相談から、どんなサービスが合いそうか、どんな言葉でプロフィールを書けばいいかまで、一つひとつ丁寧に寄り添いながらサポートしています。むずかしく考えなくて大丈夫です。お気軽にご相談ください。
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