じっとしていられない子と、造形の90分|集中できない子の絵画教室

「うちの子、家でも5分と座っていられないんです。絵画教室なんて、たぶん無理ですよね」
体験のお申し込みをためらう理由として、いちばんよくうかがう言葉です。食卓でも宿題でも、すぐ立ち上がる。手いたずらが止まらない。話しかけると別のことを見ている。だから、机に向かってじっと描く時間なんて、この子には向いていないだろう——そう考えて、絵の習い事を最初から候補から外してしまうご家庭は少なくありません。
この記事でお伝えしたいのは、少し違う見方です。「集中できないから絵画教室は無理」なのではなく、「集中しつづける前提」のほうが、そもそも子どもに合っていないのかもしれない、ということです。落ち着きのなさを、その子の性格や欠点として片づける前に、時間の使い方や場のつくり方のほうを見直してみる。造形クラブの90分は、まさにその発想で組み立てています。
「集中できない子」という言い方は、その子のせいで問題が起きているように聞こえます。でも実際には、集中できるかどうかは、課題のサイズ、まわりの刺激、姿勢、時間の区切り方、声のかけられ方——たくさんの条件の組み合わせで決まります。条件がそろえば、同じ子が別人のように静かに描きます。逆に、条件が合わなければ、大人だって10分と持ちません。だから、まず疑うべきは子どもの性格ではなく、場のほうです。
そもそも、子どもはどれくらい集中できるのか
まず、目安を知っておくと気持ちが楽になります。学研教室のコラム「子どもの集中力はいつまで続く?」では、幼児から小学校低学年ごろの子どもが集中できる時間は「年齢+1分」ほどが目安だと紹介されています。5歳なら6分、7歳なら8分ほど。幼児教室ベビーパークの解説でも、小学生でおよそ15分、中学生で30分ほどが一つの目安とされ、そもそも大人でも深く集中できるのは15分程度が限界という見方が紹介されています。
つまり、7歳の子が10分で飽きて立ち上がるのは、意志が弱いからでも、しつけの問題でもありません。年齢どおりの、ごく自然な姿です。ベビーパークの記事は、次々に関心が移りやすい子が「集中力がない」「落ち着きがない」と言われがちだけれど、それは発達段階として自然な状態だ、とも書いています。
ここで一度、前提をひっくり返してみます。45分や60分、子どもを座らせつづける授業のかたちのほうが、実は子どもの集中の実態に合っていない。だとすれば、「うちの子は座れない」ではなく「座りつづけを求めない場所なら大丈夫」と言いかえられます。
もうひとつ知っておきたいのは、集中には「谷」があるということです。人は同じ強さでずっと集中し続けるのではなく、深く入っては浅くなり、また戻る、という波を繰り返します。子どもはこの波が大人より短く、はっきりしています。浅くなった瞬間に立ち上がったり、よそ見をしたりするのは、次の波に入るための「間」であることも多いのです。その間を「集中が切れた」と叱ってしまうと、次の波に入りそこねます。少し待つと、自分からまた描きはじめる——そういう場面は、教室でも毎週のように見られます。
「集中力がない」を、環境の問題として見直す
落ち着いて取り組めるかどうかは、その子の中だけで決まるものではありません。まわりの条件でずいぶん変わります。よくある「集中を切らす要因」を挙げてみます。
- 課題が大きすぎて、ゴールが見えない(「一枚仕上げなさい」だけ言われている)
- やることの意味や楽しさが、本人の中でつながっていない
- 視界に気になるものが多い(他の子の作品、掲示物、道具の山)
- ずっと同じ姿勢を求められ、体がうずうずしてくる
- 「早くしなさい」「まだやってるの」と急かされ、気持ちがそこで途切れる
逆に言えば、これらを一つずつ外していくと、同じ子でもぐっと粘れるようになります。課題を小さく区切る。「なぜこれをやるのか」を先に共有する。机まわりの刺激を減らす。動いていい時間を用意する。急かさない。特別な道具は要りません。時間と場の設計を変えるだけです。
家でできる、5つの工夫
1. 時間で区切らず、「ここまで」で区切る
「30分やりなさい」より、「空だけ塗れたら休憩しよう」。作業の区切りでゴールを示すと、子どもは残りの量を自分で見通せます。時計との戦いではなくなるので、気持ちが折れにくくなります。
2. 途中で立つことを、失敗にしない
のどが渇いた、体を伸ばしたい。そのたびに「また立った」と言われると、絵そのものが嫌になります。「一回立って、戻ってこられたね」と、戻れたことのほうを認める。動いていい時間があるから、座る時間が生きてきます。
3. 大きな紙より、小さな紙を何枚か
大きな画用紙は、それだけで「終わらない」と感じさせます。はがきくらいの紙を数枚用意して、「一枚描けたら見せて」にすると、達成の回数が増え、そのたびに気持ちがリセットされます。
4. 机の上を、いったん空にする
使う色だけ出す。それ以外はしまう。目に入るものが減るだけで、手が止まりにくくなります。片づけを「制作の一部」として一緒にやると、切り替えの合図にもなります。
5. 描く前に、少ししゃべる
「何を描く?」「その生きもの、どんな声で鳴く?」と、絵に入る前に言葉でイメージをふくらませておく。頭の中に描きたいものがある状態でスタートすると、最初の一本の線までが早く、そのぶん集中が続きます。
6. 「できた」を、その日のうちに何回もつくる
大きな達成を一回だけ用意するより、小さな「できた」を何回も味わえるようにするほうが、子どもは粘れます。「この色ぬれた」「顔かけた」「名前かいた」——どれも「できた」です。そのたびに「おっ、できたね」と声をかけると、作業が細かく区切られて、最後までのハードルが下がります。仕上げることより、途中の達成を積み重ねること。それが続ける力の土台になります。
落ち着きは、性格の問題というより、その場との相性の問題。合う場では、同じ子が驚くほど静かに手を動かします。
その声かけが、集中を切っているかもしれません
大人はよかれと思って声をかけますが、子どもにとっては、その一言が集中の糸を切る合図になっていることがあります。手が止まっているとき、頭の中では次の一手を考えていることも多いのです。よくある声かけと、言いかえの例を並べます。
| つい言ってしまう | 言いかえてみると |
|---|---|
| 「まだ描いてるの? 早くしなさい」 | 「ゆっくりでいいよ。どこまで進んだか見せて」 |
| 「また立った。座りなさい」 | 「戻ってこられたね。続きやろうか」 |
| 「ちゃんと集中して」 | 「いま、何を描こうとしてるの?」 |
| 「最後まで仕上げないと意味ないよ」 | 「今日はここまでにして、続きはまた今度でもいいよ」 |
| 「そんな描き方じゃダメでしょ」 | 「その線、おもしろいね。次どうする?」 |
右側の声かけは、どれも「手を動かしている本人のペースを、いったん尊重している」点で共通しています。急かす言葉は時間を進めますが、集中は戻してくれません。
「飽きた」と「疲れた」は、対応が違います
子どもが手を止めたとき、それが「飽きた」のか「疲れた」のかで、必要なことは変わります。飽きているなら、題材や画材を変える、少し難しくする、見る角度を変えるなど、刺激を足すと戻ってきます。疲れているなら、その逆で、いったん体を動かして休むこと、水を飲むこと、何もしない時間が必要です。
この二つを混同して、疲れている子に「もっと頑張れ」と言うと、絵は「しんどいもの」として記憶されます。逆に、飽きている子を休ませてばかりだと、「続ける力」が育つ機会を逃します。どちらなのかは、表情と声のトーンでだいたい分かります。「もうやだ」ではなく「ん〜」と手が止まっているだけなら、たいてい飽き。目をこすったり、姿勢が崩れてきたら疲れです。
造形クラブの90分は、はじめから三つに割ってあります
poppy quest(ぽぴくえ)の造形クラブは、東京・三軒茶屋のギャラリーを教室にした、毎週日曜10:00〜11:30のクラスです。対象は年長から小学生、各回6名まで。講師は武蔵野美術大学 油絵学科を卒業した現役の油絵作家です。
この90分は、「ずっと座って描く90分」ではありません。90分をひとつの塊にせず、三つに割る。それだけで、同じ子が最後まで残れます。
| 時間 | 内容 | 体の状態 |
|---|---|---|
| はじめの約30分 | 対話。今日のテーマについて話す、実物を触る、色を選ぶ | 座っても、立っても、寝転んで考えてもいい |
| まん中の約60分 | 制作。手を動かす。途中で見に来てもらう、席を立ってもいい | 立って描く子、床で描く子もいる |
| おわりの数分 | 振り返り。自分の作品を自分のことばで話す | 集まって座る。短いので集中が続く |
はじめの対話の時間は、じっとしていなくてかまいません。話しながら絵の具の色を見比べたり、モチーフの葉っぱを触ったり、体を動かしながら頭にイメージをためていく時間です。「さあ席について」と号令をかけて始めるのではなく、自然にしゃべっているうちに、描きたいものが立ち上がってくる。この助走があると、制作に入ってからの持ちがまるで違います。
制作の60分も、ひとかたまりの「がまん」にはしません。10分ほどで一度手を止めて見せに来てもらったり、道具を取りに立ったり、他の子の作品を見て回ったり。各回6名の少人数だからこそ、ひとりが動いても場が崩れません。大人数の教室では「みんなで座って」が必要になりますが、6名なら、それぞれのペースに合わせても回っていきます。
最後の振り返りは、あえて短くしています。長く座らせると、せっかく制作でのった気持ちがしぼんでしまうからです。「どこがいちばん楽しかった?」「次はどうしたい?」を一言ずつ。短いから、最後まで集中していられます。
たとえば、こんな日があります。開始そうそう椅子をくるくる回していた子が、対話の時間に「恐竜のうろこって、どんな形かな」と話しているうちに乗ってきて、制作が始まると床に座り込んで20分ほど一気にうろこを描き続けた。途中で一度立って水を飲み、他の子の絵を見て、また戻ってきて続けた。振り返りでは「うろこを一個ずつ描いたのが疲れたけど、いちばん好き」と話してくれました。この子は「集中できない子」でしょうか。座り方は自由でしたが、恐竜のうろこには、たしかに集中していました。
私たちが見ているのは、姿勢の良し悪しではありません。何か一つのことに、その子なりの深さで向き合えたかどうかです。動いていい前提にしておくと、かえって「動かずに描きたい対象」が見つかりやすくなります。
そして、上手い・下手で評価することはしません。「じっと座っていられたで賞」もありません。大事にしているのは「正解より、自分の答え」。動きの多い子が、その日の制作で何か一つ「これ、いいでしょ」と言えるものを見つけて帰れたら、その90分は成功だと考えています。
「療育とは違うの?」というご質問について
ときどき、「発達の特性があるかもしれないのですが、大丈夫でしょうか」というご相談をいただきます。造形クラブは療育の場ではありませんし、診断や特性の有無で参加をお断りすることもありません。この記事に書いた「90分を割る」「動いていい時間をつくる」「課題を小さくする」という進め方は、特性のあるなしにかかわらず、すべての子に対して同じように行っています。気になる点があれば、体験のときに様子をお伝えいただければ、その日の声のかけ方を調整します。
体験レッスンは3,000円(画材費込み)です。曜日や持ち物など、くわしくは造形クラブのページをご覧ください。
おわりに|「座れたか」より「見つけて帰れたか」 ☺️
じっとしていられない子を持つと、習い事の見学のたびに「ちゃんと座れるかな」と胃が痛くなる、という話をよく聞きます。その緊張は、よくわかります。でも、通う場所を選ぶ基準は、「うちの子が浮かないか」ではなく、「うちの子のペースでも成り立つ場か」だと思っています。
大事なのは、じっとしていられたかどうかではなく、その子が何かを見つけて帰れたかどうかです。動きの多い子ほど、自分のリズムで取り組める場に出会うと、まわりが驚くくらい深く手を動かすことがあります。
poppy questでは、「集中が続かないから絵は無理かも」とためらっているご家庭に、まずは体験でその子のリズムを見せてもらうことをおすすめしています。座らせつづけるのではなく、動きと制作を行き来しながら、その子なりの90分の過ごし方を一緒に見つけていきます。お気軽にご相談ください。
poppy quest(ぽぴくえ)造形クラブ
学校でも、おうちでもない。
三軒茶屋のギャラリーにある、ひみつきち。
子どもの「これが好き」が見つかる、もっと絵が好きになる場所です。
毎週日曜、上手さだけでは評価しません。
誰かの正解より、自分の答えを探す旅へ。
武蔵野美術大学 油絵学科卒の現役作家が、
6名までの小さな輪のとなりで、一緒に手を動かし伴走します。
- 毎週日曜 10:00〜11:30
- 年長〜小学生
- 各回6名の少人数制
つくる、つながる、わたしらしくいきる。
poppy quest

心・人・空間を彩る。
正解のない時代に、わたしなりの答えを。
「こうでなきゃいけない」世界、もう知っている毎日に、
ちょっと風穴あけてみませんか☺️
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あなたの中の好奇心や輝きを、そっと呼び起こします。
― poppy quest にできること ―
🎨 オフィスアート(空間にアートを。オーダーメイドも)
🖌 造形クラブ(こどもの今と未来を彩る造形教室)
🧡 作家さん支援(SNS・HP制作支援、バックオフィスサポート)
オーダーメイド制作や作品のご購入も、お気軽にご相談ください😊
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