「もう行きたくない」と言われた日に|習い事を辞めるか迷ったら

ある朝、支度の途中で、子どもがぽつりと言う。「今日、行きたくない」。しばらくして、「あの習い事、もう辞めたい」。
その一言で、頭の中がぐるぐるし始めた経験のある方は、多いのではないでしょうか。ここで辞めさせたら、我慢のきかない子になるんじゃないか。せっかく2年も続けたのに。月謝も道具もそろえたのに。でも、毎週いやがるのを引きずっていくのも、見ていてつらい——。
この記事では、「辞めるか、続けるか」をすぐに決める前に、いったん立ち止まって考えるための材料を並べます。専門家の見解も紹介しますが、「こうすべき」という結論を押しつけるためではありません。ご家庭がご家庭なりの答えを出すための、手がかりとして読んでいただければと思います。
先に、いちばん大事なことを書いておきます。この問題に、すべての家庭に当てはまる正解はありません。同じ「辞めたい」でも、背景が違えば答えは変わります。だから、まわりの家庭がどうしているかや、一般論の「続けたほうがいい/辞めてもいい」に合わせるのではなく、目の前のわが子の様子を軸に考えるのがいちばんです。
「行きたくない」は、結論ではなく入り口
教育評論家の親野智可等さんは、ベネッセ教育情報の記事「子どもが習い事をやめたいと言ったら」の中で、「門前払いをせず、なぜやめたいのかを丁寧に探りましょう」と書いています。「そうか、練習大変だもんね」と、まず共感して聞く。そうすることで、子ども自身もうまく言葉にできていなかった理由が、だんだん見えてくる、というのです。
「行きたくない」は結論ではなく、話の入り口です。その先に、「先生の言い方がこわい」「同じ班の子とうまくいかない」「発表会が近くて緊張している」「ただ眠い」など、いろいろな中身が隠れています。中身によって、必要な対応はまったく変わります。
「やめグセがつく」には、根拠がありません
辞めさせることをためらう理由の代表が、「一度簡単に辞めさせると、やめグセがつく」という心配です。これについて、同じ記事で親野さんは、はっきりと「根拠がない」と述べています。「習い事は、10個やめても、11個目に自分にぴったりのものに出合えれば続けられる」という言い方をしています。
発達心理学が専門の小塩真司さんも、講談社コクリコの記事の中で、「辞めたい気持ちのまま続けるのは逆効果」で、やりたくないことをやらされ続けることは心にも良くなく、上達もしにくいと指摘しています。あわせて、親には「リアクタンス(反発)」という心理が働き、子どもが辞めたいと言うと、かえって続けさせたくなるものだ、とも書かれています。「やめグセがつく」には、根拠がありません。
小塩さんは、「将来何になりたいかを今決めるのは無理」で、子どもには「いろいろやってみる」経験を通して、自分のやりたいことを探させるほうが大事だ、という立場も示しています。ひとつの習い事を続けきることそのものが目的化していないか、ときどき見直す視点です。
理由のタイプ別に、考え方の目安
「行きたくない」の中身がある程度見えてきたら、そのタイプによって、まず試すことが変わります。あくまで目安ですが、整理の助けになればと思います。
| 「行きたくない」の中身 | まず試すこと |
|---|---|
| 内容が合っていない(興味が持てない、向いていないと感じる) | ほかの分野を体験してみる。無理に続ける意味は小さい |
| 人間関係(先生の言い方、同じクラスの子) | クラスや時間帯の変更、先生への相談。場を変えると続くことも |
| 一時的なしんどさ(発表会前、進級のプレッシャー) | その山を越えるまで見守る。終わると落ち着くことが多い |
| 疲れ・時間の余裕のなさ(習い事が多い、生活が詰まっている) | 回数を減らす、ほかの予定を整理する。休む選択も |
| 理由がはっきりしない(ただ「やだ」としか言わない) | 数日おいて何度か聞く。1か月だけ休んで様子を見る |
「内容が合っていない」だけは、少し扱いが違います。人間関係や一時的なしんどさなら、環境を整えれば戻ってくることが多いのですが、そもそも興味が持てないものを続けさせても、得られるものは多くありません。その場合は、早めに切りかえて、別の「好きかもしれないもの」に出会う時間にあてたほうが、本人のためになります。
辞めると決める前に、できること
「続ける」か「辞める」かの二択で考えると、どちらもリスクが大きく感じて、決められなくなります。あいだにある選択肢を並べてみます。
- 理由を、日をあらためて何度か聞く。一度で全部は出てきません。お風呂や車の中など、正面で向き合わない場面のほうが話しやすいです。
- 先生や他の保護者に、教室での様子を聞く。家で見えている姿と、教室での姿が違うことはよくあります。
- 回数や時間帯を変えられないか相談する。疲れが理由なら、コマを減らすだけで続くこともあります。
- 「1か月だけ休む」と期限を切って休む。辞める決断をしないまま、距離を置いて様子を見ます。
辞めると決める前に、「少し休む」という真ん中の選択肢があります。ベネッセの記事でも、時間的な問題なら教室変更や回数調整で対応でき、一時的につらい時期なら「しばらく休んでみる」という方法がある、と紹介されています。休んでみて、「またやりたい」と戻る子もいれば、「やっぱりいい」とすっきり辞める子もいます。どちらでも、本人が納得して次に進めることが大切です。
続ける目的が「ここまで続けたから」だけになっていたら、それは一度立ち止まっていいサインかもしれません。
「辞めたい」と言えたことは、それ自体がいいこと
親としては動揺する場面ですが、見方を変えると、子どもが「辞めたい」と口に出せたのは、悪いことではありません。自分の気持ちに気づき、それを親に言葉で伝えられた。がまんして黙り込んだり、体調を崩してしまったりする前に、SOSを出せたということです。
ここで「そんなこと言わないの」「一度始めたんだから」と頭ごなしに返してしまうと、次からは言わなくなります。言わなくなった気持ちは、消えるのではなく、別のかたちで出てきます。朝おなかが痛くなる、機嫌が悪い日が増える、といったふうに。だから、内容にすぐ賛成できなくても、「話してくれてありがとう」の姿勢だけは崩さないでいたいところです。
実際、辞めるかどうかを子どもと一緒に落ち着いて話し合った経験そのものが、後になって効いてきます。「自分の気持ちを言えば、頭ごなしに否定されずに、一緒に考えてもらえる」。この感覚を一度持てた子は、次にしんどいことがあったときも、早めに相談してくれるようになります。習い事を続けたか辞めたかという結果より、その話し合いのプロセスのほうが、長い目で見ると大きな財産になります。
親のあせりは、どこから来ているのか
「辞めさせたくない」と強く思うとき、その気持ちの出どころを一度見てみると、判断がしやすくなります。よくあるのは、次のようなものです。
- これまでかけたお金や時間がもったいない。過去の投資は、これからの判断とは切り離して考えます。すでに使ったものは、続けても戻ってきません。
- まわりの子が続けているのに、うちだけ。よその家庭の基準で決めると、わが子の実際の様子が見えなくなります。
- 「辞めさせる親」だと思われたくない。他人の目より、子どもの毎週の表情のほうが確かな情報です。
- 子どもに言われると、つい反対したくなる。コクリコの記事にある「リアクタンス(反発)」です。これが働いていると気づくだけで、少し冷静になれます。
これらは、どれも自然な感情です。ただ、いずれも「子ども本人が、いまどうか」とは別の話です。判断の中心には、あくまで子どもの様子を置く。それだけで、迷いはずいぶん整理されます。
造形クラブでは、「辞める」の前に「休む」がとりやすい
poppy quest(ぽぴくえ)の造形クラブは、東京・三軒茶屋のギャラリーを教室にした、毎週日曜10:00〜11:30の少人数クラスです。対象は年長から小学生、各回6名。講師は武蔵野美術大学 油絵学科を卒業した現役の油絵作家です。
私たちは、「辞めるかどうか」で悩む前に、気軽に休める仕組みにしています。キャンセル料はいただきません。お休みした回は、振替や課題の持ち帰りでカバーします。だから、「気が乗らない時期」に無理に通わせなくても、月謝を捨てることにはなりません。行きたくないと言われた週は、一度休んでみる。それで気持ちが軽くなることも、よくあります。費用や振替のルールは、造形クラブのページにまとめています。
そもそも「行きたくない」の原因が、教室の中の「うまい・へた」の比較にあることも少なくありません。造形クラブでは、上手い・下手で評価しません。人と比べる場面をつくらず、「正解より、自分の答え」を大事にしています。順位や出来ばえでいやになる、という辞め方は起きにくい環境です。
90分の流れも、辞めたい気持ちが芽生えにくいように組んでいます。対話30分・制作60分・振り返り。はじめに「今日は何をしても正解」という空気をつくってから制作に入るので、「できなかったらどうしよう」で行きしぶる、という循環になりにくい。各回6名の少人数なので、講師が一人ひとりの様子を見て、しんどそうな日は早めに気づけます。「最近、来るとき表情がかたいですね」といったことは、こちらからもお伝えします。家庭と教室の両方から様子を見て、休むか続けるかを一緒に考えられるのが、少人数のいいところです。
それでも「合わないな」と感じたら、無理に引き止めることはしません。子どもには時期があり、いま夢中なものが半年後には変わっていることもあります。絵から一度離れて、また戻ってくる子もいます。そのときは、休会でも退会でも、続きやすいかたちをご相談ください。
実際、こんなことがありました。ある子が「もう行きたくない」と言い出し、保護者の方が相談に来られました。よく聞いてみると、直前の回で作品がうまくいかず、それを引きずっているようでした。1回だけお休みして、次の回は「前の続きじゃなくて、新しいのを描いていいよ」と伝えたところ、けろっとした顔で戻ってきて、その日はいちばん長く手を動かしていました。辞める話にはなりませんでした。「行きたくない」の多くは、こういう小さな引っかかりで、休みと仕切り直しで解けることも少なくありません。
もちろん、休んでも戻る気配がなく、話を聞いても前向きな要素が出てこないなら、それは「いまじゃない」というサインかもしれません。そのときは、辞めることを一緒に受けとめます。絵は逃げませんし、数年後にまた始める人もたくさんいます。
「辞めた経験」も、無駄にはなりません
ひとつの習い事を辞めることは、失敗ではありません。「これは自分にはそんなに合わなかった」と分かったのは、一つの発見です。合わないものを見きわめた経験は、次に何かを選ぶときの目を育てます。
大事なのは、辞め方です。「もう行かない、以上」で終わらせず、「何がしんどかった?」「どこは楽しかった?」と一度ふりかえっておくと、子どもの中に整理が残ります。全部が嫌だったわけではない、と本人が思えると、次の一歩が軽くなります。
可能なら、最後の日は「行かせる」より「一緒に締めくくる」意識で。先生にお礼を言う、これまでの作品や記録を見返す、それだけでも「途中で投げ出した」ではなく「一区切りつけた」という感覚になります。この小さな儀式があるかないかで、その習い事の思い出の色が変わります。
そして、辞めたあとしばらくして、子どもがふと「またやってみようかな」と言うことがあります。そのときは「この前は辞めたじゃない」と言わず、素直に受けとめてあげてください。親野さんの言う「11個目」は、一度辞めたものに戻るかたちで見つかることも、めずらしくありません。
おわりに|子どもの笑顔を、いちばん上に置く 🕊
ベネッセの記事は、最後に「子どもの笑顔を最優先に考えましょう」と結んでいます。無理に続けさせて、毎週ゆううつな顔をさせるくらいなら、いったん立ち止まる。シンプルですが、迷ったときに立ち返る基準として、とても実用的だと思います。
辞める・続ける・休む。どれを選んでも、正解にも不正解にもなりません。子どもの「行きたくない」を、ちゃんと聞いて、一緒に考えた。その事実のほうが、どの結論よりも子どもの中に残ります。
poppy questでは、「辞めたい」と言われて迷っているご家庭に、通いつづけることだけを勧めるのではなく、休むことも、いったん離れることも含めて、お子さんのペースを一緒に考えていきます。まずは、何がしんどいのかを聞くところからで大丈夫です。お気軽にご相談ください。
poppy quest(ぽぴくえ)造形クラブ
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三軒茶屋のギャラリーにある、ひみつきち。
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毎週日曜、上手さだけでは評価しません。
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- 毎週日曜 10:00〜11:30
- 年長〜小学生
- 各回6名の少人数制
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poppy quest

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