リビングの床に座り、テーブルに並んだクレヨン・クーピー・色鉛筆から一本を選ぶ子どもの手元を上から見た様子

家の画材、これだけで十分|クレヨン・クーピー・色鉛筆の違いと選び方

リビングの床に座り、テーブルに並んだクレヨン・クーピー・色鉛筆から一本を選ぶ子どもの手元を上から見た様子

文房具店の画材コーナーに立つと、その種類の多さに少し圧倒されてしまうことがあります。クレヨン、クレパス、クーピー、色鉛筆、水彩色鉛筆、パステル……。しかも同じクレヨンでも12色、24色、36色、48色と並んでいて、「小さいセットを買って、あとで足りなくなったら困る」と、つい大きな箱に手が伸びてしまう。お子さんが絵を描くのが好きだと、なおさら「良いものを、たくさん」そろえてあげたくなりますよね。

けれど、家庭でお子さんが絵を描くために本当に必要な画材は、実はそれほど多くありません。この記事では、クレヨン・クーピー・色鉛筆それぞれが得意なこと、年齢による相性の目安、そして「12色で足りる」と言える理由を整理します。結論から言うと、画材は多ければ多いほど良い、というものではありません。むしろ、色数がしぼられているほうが、子どもが工夫する余地は大きくなります。

クレヨン・クーピー・色鉛筆、それぞれが得意なこと

まずは3つの画材の性格を知っておくと、選ぶときに迷いにくくなります。どれかが優れているという話ではなく、得意な場面が違うだけです。ご家庭にすでに何かしらあるなら、まずはそれを使い切るところから始めて大丈夫です。

クレヨンは、顔料をワックス(ろう)で固めた画材です。少ない筆圧でもしっかり色がのるので、力の弱い小さな子でも「塗れた」という手ごたえを感じやすいのが特長です。太い線、広い塗り、重ね塗りが得意な反面、手や服につきやすく、細かい描写には向きません。よく似た「クレパス」はクレヨンより軟らかく、伸びやぼかし、混色ができます。サクラクレパスの解説でも、クレヨンは「線を描く」、クレパスは「描くことと塗ること」の両方に向く画材として区別されています(参考:クレヨンとクレパスの違い、サクラクレパス公式サイト)。

クーピーは、芯だけでできた色鉛筆のような画材です。紙巻きや木軸がなく全体が芯なので折れにくく、消しゴムで消せて、細い線も広い面も描けます。1本で何役もこなすので、持ち運びや学校での使用にも向いています。ただし芯がやや硬めなので、大きな画面を一気に塗りつぶすには根気がいります。広い空や地面をべた塗りしたい日には、クレヨンやクレパスに持ち替えると、子どもの「終わらない」といういらだちが減ります。

色鉛筆は、硬い芯で細かい描写ができ、重ね塗りで深い色合いを出せます。筆圧のコントロールが前提になるため、ごく小さな子には少し難しいこともありますが、小学生になると学校の学習とも重なり、扱いに慣れていきます。芯が硬い分だけ先がとがり、指先の細かい動きを促すので、迷路や小さな模様を描くのが好きな子とは相性がよい画材です。

この3つに加えて、キャップをなくした水性サインペンや、短くなった鉛筆も、立派な画材です。新しくそろえる前に、家じゅうから「描けるもの」を一つの箱に集めてみてください。質感の違うものが混ざっているほうが、「これはにじむ」「これはかすれる」と、子どもが道具の個性に気づくきっかけになります。

画材色ののりやすさ細い線広い面ぬり消せる手の汚れ向いている場面
クレヨン/クレパスとても良い苦手得意×つきやすい小さな子のはじめての一本、のびのび塗る
クーピーふつう得意ややがんばる○少ない外出先、学校、線も面も一本で
色鉛筆筆圧しだいとても得意苦手△少ない小学生の細かい描写、重ね塗り

年齢と画材の相性(あくまで目安です)

手の発達には大きな個人差があります。下の区分は「この時期はこうでなければいけない」というものではなく、選ぶときの手がかりとして受け取ってください。同じ年齢でも、鉛筆をしっかり握れる子と、まだ手のひら全体で持つ子がいます。年齢の数字より、いま目の前でどう持っているかを見てあげてください。

  • 2〜3歳ごろ:手のひら全体でぎゅっと握る「にぎり持ち」の時期。太くて短いクレヨンや、水で落ちるタイプが安心です。折れても気にしないくらいの気持ちで。
  • 4〜6歳ごろ(年少〜年長):指先が少しずつ使えるようになり、鉛筆持ちへ移っていきます。クレパスやクーピーで「塗る」楽しさが広がり、色を選ぶ・混ぜることへの興味も出てきます。
  • 小学校低学年:筆圧が安定してきます。色鉛筆で細かく描いたり、クーピーで学校の図工と両立させたり。道具の使い分けが始まります。
  • 小学校中〜高学年:目的に合わせて画材を選べるようになります。水彩色鉛筆やパステルなど幅を広げてもよい時期ですが、無理に増やす必要はありません。

「何歳だからこれ」ではなく、お子さんの手の様子や好みを見て選ぶ。これがいちばんの目安です。まわりの子が48色を使っていても、あせらなくて大丈夫です。ある年の作品を見返すと、その時期に何をよく使っていたかが分かります。それが、次に何を足すかを教えてくれます。

年齢別の「よくある場面」と、あわてない対処

画材にまつわる困りごとは、たいてい決まった形で現れます。先に知っておくと、その場でため息をつかずにすみます。

  • クレヨンをぜんぶ折ってしまう(2〜3歳):力の加減がまだ難しい時期です。折れた短いクレヨンはむしろ持ちやすく、寝かせて使うと広い面が塗れます。「折れたら終わり」ではなく「短いのは短いなりの使い道がある」と考えると気が楽です。
  • すぐ「色がない」と言う(4〜6歳):ほしい色がセットにない、という訴えです。ここで買い足すより、「近い色はどれ?」「混ぜたらどうなる?」と一度返してみてください。無い色を作る経験が、いちばんの練習になります。
  • 間違えると全部消してやり直す(小学生):形が気になり始めた時期のサインです。消せる画材を用意しつつ、ときどき「消せない紙の日」をつくって、直せないまま描き切る経験も残してあげると、手の動きがのびやかになります。
  • 手や机、服が汚れて泣く:新聞紙を広め敷き、汚れてよい服にしておくと、汚れること自体を叱らずにすみます。汚れは片づけの練習だと割り切ると、家庭の空気がやわらぎます。

「12色で足りる」と言える理由

色数は12色から。理由は4つあります。

  • 色は混ぜて作れる:赤・青・黄に白と黒があれば、多くの色は手元で作れます。色数が少ないほど、混ぜて作る工夫が生まれます。
  • 「見立てる力」が育つ:12色だと「この葉っぱに近いのはどれだろう」と考えます。48色だと、ぴったりの色をただ探すだけになりがちです。色を選ぶ時間そのものが、よく見る時間になります。
  • 自分で管理できる:子どもが自分で片づけられ、なくした色にも気づけます。片づけまでが描く時間の一部だと感じられます。
  • 「足りない」から表現が面白くなる:肌色がなければ何色を混ぜよう、という問いが絵を深くします。

実際、色数の多いセットを買っても、子どもがよく使うのは10色前後に落ち着くことがほとんどです。減った色だけを単品で買い足していくと、その子が本当に必要としている色がだんだん見えてきます。最初から48色をそろえるより、そのほうが道具とのつきあいが長続きします。

たくさん買わせないことの誠実さ

画材メーカーもお店も、たくさん売れたほうが嬉しいのは当然です。でも、家庭でお子さんが絵を描くのに、高価な道具や大量の色は要りません。良い画材を与えれば上手になる、というわけではありません。限られた道具で工夫した経験のほうが、あとになって表現の引き出しになります。買い足すのは「この色がどうしても欲しい」とお子さん自身が言ったときで、十分に間に合います。

家にある画材で、十分にはじめられます

折れたクレヨン、短くなった色鉛筆、キャップをなくしたサインペン。捨てずに一つの箱にまとめておくだけで、立派な画材セットになります。むしろいろいろな画材が混ざっているほうが、質感の違いに気づけて面白いものです。新品をそろえてからでないと始められない、ということはありません。今日、家にあるものから描き始められます。きょうだいで一つのセットを共有しても、取り合いの中で「貸して」「どうぞ」の練習になります。

紙も同じで、チラシの裏、包装紙、使いかけのノート、段ボールの切れ端。つるつるの紙とざらざらの紙では、同じクレヨンでものり方がまるで違います。「白い画用紙でなければ描けない」と思わずにすむと、描き始めるまでのハードルがぐっと下がります。

水彩絵の具やパステルは、あとからでいい

「絵の具セットも買っておいたほうがいいですか」とよく聞かれます。小学校では図工の時間に学校指定の絵の具セットを使うことが多いので、家庭で先回りして買う必要はありません。パステルやアクリル絵の具、水彩色鉛筆なども、お子さんが「これを使ってみたい」と言い出してからで十分間に合います。最初にそろえるほど、途中で興味が別のものに移ったときに「もったいないから使いなさい」と言いたくなってしまう。それはお互いにとって少し窮屈です。

画材は、増やすより「使い切る」ほうがずっと学びになります。クレヨンを最後の小さなかけらまで使う、色鉛筆を持てなくなるまで削る。使い切った道具の箱を見ると、子ども自身が「こんなに描いたんだ」と実感できます。

消せる・消せないで選ぶという視点

画材選びで意外と大事なのが「消せるかどうか」です。クレヨンやクレパスは基本的に消せません。だからこそ、線を引くときに迷いが減り、勢いのある絵になります。一方でクーピーや色鉛筆は消しゴムで直せるので、慎重に形を取りたい子や、間違いが気になって手が止まってしまう子には安心材料になります。消せないことは弱点ではなく、思い切りのよさにつながります。お子さんの性格に合わせて、両方を用意しておくと、その日の気分で選べます。

小さいうちは「消せない画材でのびのび」、少し大きくなって形にこだわり始めたら「消せる画材で落ち着いて」。そんなふうに、成長に合わせて主役が入れ替わっていくのが自然です。

きょうだいで年齢差があるとき

上の子と下の子で年齢が離れていると、画材選びに悩みます。おすすめは、共用のクレヨンやクーピーを1セット置いておき、そこに上の子専用の色鉛筆を少しだけ足す形です。全部を別々にそろえると管理が大変になり、「これはお姉ちゃんの」という線引きが増えて、かえってけんかのもとになります。共用の道具を「順番に使う」「使ったら戻す」という小さなルールのほうが、道具そのものより大切なことを教えてくれます。

発達の視点から見た「にぎる・つまむ・えがく」

小さな子が画材を握る手つきは、そのまま手指の発達の記録でもあります。はじめは手のひら全体でつかむ「にぎり持ち」。やがて親指と人差し指でつまむ動きが育ち、三本の指で支える鉛筆持ちへと移っていきます。太いクレヨンは、にぎり持ちの時期に無理なく色を出せる形をしています。細い色鉛筆は、つまむ力とコントロールが育ってきた合図が出てから。道具を年齢で決めるのではなく、手の育ちに合わせて渡していくと、子どもは「うまく持てない」というつまずきを感じずにすみます。

描く経験そのものにも、教育的な意味があります。何を描くか決める、色を選ぶ、はみ出したところをどうするか考える。この一連の小さな判断のくり返しが、自分で決める力や、途中であきらめない粘り強さを少しずつ育てます。上手な絵を仕上げることより、その過程で子どもが何度も選びなおしている、そのこと自体が育ちにつながっています。だからこそ、道具は「選べる範囲」でちょうどよく、多すぎない方がよいのです。

よくあるご質問

  • クレヨンとクレパス、どちらを買えばいいですか:はじめの一本なら、のびて混色もできるクレパスが使いやすいです。線をはっきり描きたい時期にはクレヨンも。両方が家にあるなら、まず使い切ってから考えて大丈夫です。
  • 100円ショップの画材でも大丈夫ですか:十分です。発色や描き心地に差はありますが、家庭で楽しむぶんには問題ありません。むしろ気兼ねなくたくさん使えます。
  • 水で落ちるクレヨンは必要ですか:壁や床に描いてしまう時期は助かります。落ち着いてきたら、ふつうのものに切り替えて構いません。
  • 色鉛筆は何色入りを選べばいいですか:12色で十分です。足りない色が出てきたら、その色だけ単品で買い足すのが、いちばん無駄がありません。

造形クラブでは、あえて画材をしぼっています ☺️

poppy questの造形クラブは、東京・三軒茶屋のギャラリーが教室です。毎週日曜10:00〜11:30、対象は年長〜小学生、各回6名の少人数制。講師は武蔵野美術大学 油絵学科卒の現役作家です。ここでも、一度にたくさんの画材を出すことはしません。その日のテーマに合わせて2〜3種類にしぼります。選択肢が多すぎると「何を使うか」で時間が過ぎてしまい、「何を描くか」に気持ちが向かなくなるからです。

たとえば「かたち」をテーマにした日はクレパスと画用紙だけ、「細かく見る」日は色鉛筆と小さな紙だけ、というように。道具が少ないと、子どもは手持ちの中で工夫を始めます。90分は、対話30分・制作60分・振り返りという構成です。はじめの対話で「今日は何を、どう表そうか」を一人ずつ話し、制作の60分では講師が順番にそばへ行き、最後の振り返りでおたがいの作品を見せ合います。上手い下手で評価はせず、「正解より自分の答え」を大切にしています。「この色がなかったから、混ぜて作ったんだ」という報告が、いちばんうれしい瞬間です。

まとめ ✨️

クレヨンは色がのる力強さ、クーピーは折れにくさと消せる安心、色鉛筆は細かく描ける繊細さ。得意が違うだけで、優劣はありません。年齢はあくまで目安、お子さんの手の様子で選べば大丈夫です。そして色数は12色から。足りない中で工夫した経験こそが、絵を楽しむ土台になります。困ったときは、家にある道具を一つの箱に集めるところからで十分です。

poppy questでは、画材選びのご相談も、体験レッスン(3,000円・画材費込み)の中でお受けしています。お子さんの手の動きや好みを見ながら、まずは家にあるもので何ができるかを一緒に考えます。お気軽にご相談ください。詳しくは造形クラブのページをご覧ください。

poppy quest(ぽぴくえ)造形クラブ

学校でも、おうちでもない。
三軒茶屋のギャラリーにある、ひみつきち。
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毎週日曜、上手さだけでは評価しません。
誰かの正解より、自分の答えを探す旅へ。
武蔵野美術大学 油絵学科卒の現役作家が、
6名までの小さな輪のとなりで、一緒に手を動かし伴走します。

  • 毎週日曜 10:00〜11:30
  • 年長〜小学生
  • 各回6名の少人数制
ぽぴくえ造形クラブについて

つくる、つながる、わたしらしくいきる。

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