水彩絵の具のパレットで青と黄色から緑を作る子どもの手元

絵の具が濁ってしまう子へ|色は混ぜるより少しずつ足す(混色のコツ)

水彩絵の具のパレットで青と黄色から緑を作る子どもの手元

お子さんが絵の具で「緑を作りたい」「肌色を作りたい」と混ぜはじめて、あれもこれもと足していくうちに、パレットの色がぜんぶ灰色がかった茶色になってしまう。せっかく描いた絵の上でも同じことが起きて、「わたしのお花、濁っちゃった」としょんぼり……。よく見かける場面です。そして親としても、「混ぜすぎだよ」と言う以外に、どう教えたらいいのか分からない。

私は油絵を描く作家として日々パレットの上で色を作っていますが、色は『混ぜる』より『少しずつ足す』ほうがきれいに作れます。この記事では、絵の具が濁ってしまう仕組みと、きれいな緑・肌色・グレーの作り方、水の量の目安、そして家庭で教えるときの声かけを、順番にお伝えします。

なぜ濁るのか──混ぜるほど暗くなる仕組み

絵の具の色は、光の一部を吸収して、残りを反射することで見えています。2つの絵の具を混ぜると、それぞれが吸収する光が足し合わさるので、反射して返ってくる光は減ります。つまり色は混ぜるほど暗く、にごっていきます。これを減法混色といいます。

とくに、色相環で向かい合う関係にある色(赤と緑、青とオレンジ、黄と紫。これを補色といいます)どうしを混ぜると、たがいの鮮やかさを打ち消し合って、一気にグレーや茶色に近づきます。3色、4色と足していくと、どこかで必ず補色の関係が生まれるので、濁って当然なのです。サクラクレパスの「色の作り方」でも、混ぜる色は少なくすること、明るい色から暗い色を少しずつ加えることがすすめられています(参考:サクラクレパス『色の作り方』)。

家庭でいちばん多いのは、こんな流れです。緑を作ろうとして、まず青をたっぷり出す。思ったより暗いので黄色を足す。まだ暗いのでまた黄色を足す。気づけばパレットいっぱいの、くすんだ緑。ここでのつまずきは「混ぜすぎ」ではなく、暗い色・強い色を先に出してしまったことです。青を後から「少し」足すやり方に変えるだけで、同じ絵の具でも結果はまったく変わります。

混ぜるのは、多くても2色まで。3色目からは「少し」を意識する。

混ぜる前に、まず「その色をよく見る」

混色がうまくいかない子の多くは、作りたい色を頭の中のイメージだけで追いかけています。実物の葉っぱ、みかんの皮、自分の手の甲。それを1分だけじっと見てから混ぜ始めると、「思ったより黄色いな」「影のところは緑じゃなくて茶色っぽい」と気づきます。よく見る時間が長いほど、混ぜる回数は少なくなります。見る、少し混ぜる、また見る。このリズムが、濁りを防ぐいちばんの近道です。

きれいな緑・肌色・グレーの作り方

緑:青からではなく、黄色をベースに、青をほんの少しずつ加えます。黄色が多めのところから始めて、様子を見ながら青を足すと、葉っぱのような明るい緑になります。先に青をたっぷり出してしまうと、修正しようと黄色を足すたびに量が増え、濁りやすくなります。

肌色:白を土台にして、黄色を少し、赤(できれば朱色)をほんのわずか。それでも足りなければ、ごく少量の茶色を。ポイントは作りすぎないことと、混ぜ棒でこねすぎないことです。肌の色は一色ではないので、少し黄みの部分、少し赤みの部分があってかまいません。

グレー:黒と白だけで作ると、のっぺりした冷たい灰色になりがちです。青とオレンジ、あるいは補色どうしをごく少量ずつ混ぜて、そこに白を足すと、色味のある生きたグレーになります。曇り空や影の色は、このグレーのほうがしっくりきます。

下の表は、家庭でよく作りたくなる色の「作り方の順番」をまとめたものです。共通するのは、暗い色・強い色を先に出さないこと。あとから足すのは「ほんの少し」を守ることです。

作りたい色ベースにする色少しずつ足す色コツ
葉っぱの緑黄青(ほんの少し)青を足しすぎたら黄を足すのではなく、別の場所で作り直す
肌色白黄 → 朱を少しこねすぎない。むらがあって自然
オレンジ黄赤を少しずつ赤から始めると暗くなりやすい
空の水色白青をごく少し水で薄めても明るくできる
影のグレー白青+オレンジを少量黒は使わないほうが色が生きる
茶色オレンジ青か紫を少し赤+緑でも作れるが濁りやすい

なぜ子どもは「全部混ぜたく」なるのか

そもそも、小さな子が絵の具を全部混ぜてしまうのは、いたずらでも不注意でもありません。色が変わっていく様子そのものが面白い実験だからです。青に黄を落とすと緑になる。その驚きを何度も味わいたくて、手が止まらなくなる。これは色の性質を体で確かめている大切な時間です。だから、「混ぜないで」と止めるより、混ぜてよい紙を別に用意するのがおすすめです。作品用の紙と、実験用の紙。この2枚があるだけで、子どもは安心して両方を楽しめます。

この「混ぜて確かめる」経験には、教育的な意味もあります。青と黄でどんな緑ができるか、赤をどれだけ足すとオレンジが暗くなるか。子どもは手を動かしながら、原因と結果の関係を自分で見つけています。予想して、試して、ちがったらやり直す。これは理科の実験とまったく同じ順序です。濁った色をたくさん作った子ほど、あとで「この色はこうすればできる」という見通しを持てるようになります。失敗の回数は、そのまま学びの回数です。

年齢別の目安──「混ぜる」との付き合い方

  • 3〜4歳ごろ:色が変わること自体が楽しい時期。きれいな色を作らせようとせず、大きな紙で自由に混ぜさせて大丈夫です。「何色になった?」と一緒に名前をつける遊びに。
  • 年中〜年長:「この色を作りたい」という目的が出てきます。2色までなら自分で、というルールを一つだけ伝えます。
  • 小学校低学年:ベースの色から少しずつ足す、という順番を教えるとすぐ吸収します。色見本づくりが楽しくなる時期です。
  • 小学校中学年以降:補色の関係や、影の色の作り方など、少し理屈のある話も届くようになります。濁った色を「使える色」として意識的に残せるように。

筆と水入れの使い方でも、濁りは変わる

  • 筆はころころ変えず、明るい色から暗い色の順に使うと、洗う回数が減って濁りにくくなります。
  • 水入れは2つ用意し、「筆を洗う水」と「絵の具を溶く水」を分けます。牛乳パックを切ったものでも十分です。
  • 洗った筆は、布やティッシュで軽く水気を取ってから次の色に。筆に残った水が、パレットの色を薄めて濁らせます。
  • 太い筆と細い筆を用意しておくと、広い面と細部で持ち替えられ、塗り直しが減ります。
  • 使い終わったパレットは、乾く前に洗います。乾いた絵の具が次の日に溶け出して、最初から濁った色になることがあります。

水の量──薄めるのはよいが、多すぎると濁る

  • 水彩絵の具を明るくしたいときは、白を混ぜるより水で薄めるのが基本です。白を混ぜると不透明になり、色がくすみやすくなります。
  • 水が多すぎると紙の上で水たまりになり、乾いたあとに紙が毛羽立ったり色ムラが出たりします。そこを塗り直すと、下の色と混ざって濁ります。
  • 筆を洗う水と、絵の具を溶く水はできれば別の容器に。洗った濁り水で色を溶くと、最初から濁った色になります。
  • パレットの仕切りを使い、色ごとに場所を決めておくと、混ざり事故が減ります。
  • 下の色が乾いてから上に塗ると混ざりません。急ぐときは、ドライヤーの冷風を遠くから当てると待ち時間が短くなります。

家庭での声かけ──「濁っちゃったね」で終わらせない

色が濁ってしまったとき、いちばん避けたいのは「だから混ぜすぎだって言ったでしょう」で終わることです。おすすめは、一緒に振り返ること。「何色と何色を混ぜたか覚えてる?」と聞いて、手順を思い出す。それだけで次につながります。

声かけの例をいくつか挙げます。「この色、どうやって作ったの?」「もう一回作るとしたら、どの色から始める?」「この色に名前をつけるとしたら?」。どれも、うまくできたかどうかを問うのではなく、やったことを言葉にしてもらう問いです。子どもは説明するうちに、自分の手順を整理していきます。

濁った色そのものにも名前をつけてあげると、失敗が発見に変わります。「くもり空の色だね」「かれ葉の色みたい」。濁りは失敗ではなく、混色を学んでいる途中のサインです。実際、その“くすんだ色”は、影や背景、木の幹、土などを描くときにとても役立ちます。きれいな色ばかりでは、絵はかえって平坦になります。にごりの色を「使える色」として引き出しに入れておけると、表現の幅がぐっと広がります。

そして、絵の上で濁ってしまったときのリカバリーも知っておくと安心です。乾いてから、上から不透明な色(白や明るい色)でポイントを描き足すと、濁りが背景になじんで、かえって深みが出ることがあります。全部を塗り直すより、一部を生かすほうが、たいてい良い結果になります。

混色を「遊び」にすると、うまくなる

混色は、練習だと思うと子どもは身構えます。遊びの形にすると、同じことを何度でもくり返します。家庭でできる簡単なものを、いくつか紹介します。

  • 3色だけチャレンジ:赤・青・黄の3色(と白)だけで一枚描いてみる。緑もオレンジも紫も、全部その場で作ることになります。「この色、何と何で作った?」と当てっこにしても盛り上がります。
  • グラデーションのはしご:紙に四角を5つ並べて描き、左端を黄、右端を青にして、間の3つを少しずつ変化させて塗る。「少しずつ足す」の練習がそのまま作品になります。
  • 色に名前をつける:作った色に「ゆうぐれ色」「かめのこうら色」と名前をつけて、小さな紙に塗って貼っていく。自分だけの色見本帳ができます。
  • 同じ緑を2回作る:一度作った緑と同じ色を、もう一度作ってみる。同じにするには手順を覚えている必要があるので、自然と「何から始めたか」を意識するようになります。

どれも、うまくできたかを問う遊びではありません。手を動かしながら、色がどう変わるかを体で覚えていく時間です。こうした遊びを何度かやった子は、いざ作品を描くときにも「先に黄色を出しておこう」と、順番を自分で選べるようになります。

濁った絵を、どう立て直すか

すでに画面が濁ってしまった絵も、あきらめる必要はありません。濁りは、明るい色を「上に足す」ことで生き返ります。乾いてから、白や明るい黄色で花びらのふちや光の当たる部分を描き足すと、濁った部分が背景に回って、かえって奥行きが出ます。全部を塗りつぶすより、濁った色を「影」として残したほうが、絵は豊かになります。

子どもが「もう捨てる」と言い出したときは、「この上に、一番好きな色でひとつだけ描いてみて」と提案してみてください。失敗した絵を立て直した経験は、次に濁ったときの「まだ何かできる」という落ち着きにつながります。

よくあるご質問

  • 何色そろえれば混色の練習になりますか:赤・青・黄・白の4色で十分です。色数が少ないほうが、混ぜて作る力がつきます。
  • 黒はいつ使わせたらいいですか:影やグレーは補色で作るほうが色が生きます。黒は「線を締めたいとき」の一本、くらいの位置づけで十分です。
  • 作りたい色にどうしてもならないときは:足し算をやめて、新しい場所で作り直すのがいちばん早いです。濁った色は捨てず、影の色として取っておきます。
  • 絵の具は何を選べばいいですか:学校で使うものと同じ不透明水彩で問題ありません。家庭では、汚れてよい環境を整えるほうが大事です。

造形クラブでは、混色の時間を別に取ります ☺️

poppy questの造形クラブは、東京・三軒茶屋のギャラリーが教室です。毎週日曜10:00〜11:30、対象は年長〜小学生、各回6名の少人数制。講師は武蔵野美術大学 油絵学科卒の現役油絵作家です。ここでは、作品づくりとは別に「色を作る時間」を設けることがあります。小さな紙に、2色ずつ混ぜた色見本をつくってみる。青+黄、赤+黄、赤+青……と並べていくと、混色が“当てもの”ではなく“見通しの持てる作業”になります。

90分は、対話30分・制作60分・振り返りという構成です。はじめの対話で「今日はどんな色を使いたいか」を一人ずつ聞き、制作の60分では講師が順番にパレットをのぞいて、「その青、もう少し黄色を足すと葉っぱに近づくよ」と声をかけます。最後の振り返りで、作った色に名前をつけて見せ合います。上手い下手で評価はせず、「正解より自分の答え」を大切にしています。濁ってしまった色を「これは雨の日の色」と名づけて堂々と見せてくれる、その姿勢をいちばん大事にしています。

まとめ 🕊

色が濁るのは、混ぜるほど光が減るという仕組みのため。だから、混ぜるのは2色まで、明るい色から暗い色を少しずつ、水で薄める、洗い水と溶き水を分ける。これだけで、緑も肌色もぐっときれいになります。そして濁った色も、名前をつければ立派な一色です。混ぜる前によく見る時間をとることが、いちばんの近道です。

poppy questでは、色が濁って落ち込んでいるお子さんに「もう一回」と言う前に、どこで濁ったのかを一緒に見ます。混色は慣れれば必ず扱えるようになります。お気軽にご相談ください。体験レッスンは3,000円(画材費込み)、詳しくは造形クラブのページをご覧ください。

poppy quest(ぽぴくえ)造形クラブ

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毎週日曜、上手さだけでは評価しません。
誰かの正解より、自分の答えを探す旅へ。
武蔵野美術大学 油絵学科卒の現役作家が、
6名までの小さな輪のとなりで、一緒に手を動かし伴走します。

  • 毎週日曜 10:00〜11:30
  • 年長〜小学生
  • 各回6名の少人数制
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