ダイニングテーブルで子どもの絵と通知表を並べて指でなぞる手元、暖色の夜の光

図工の通知表は何を見ている?成績の3つの観点をやさしく解説

ダイニングテーブルで子どもの絵と通知表を並べて指でなぞる手元、暖色の夜の光

学期末、通知表を開くと、国語や算数にくらべて図工の欄は項目が少なく、記号がいくつか並んでいるだけ。「うちの子、図工はそんなに得意じゃないのかな」「絵が下手だと、成績も下がってしまうの?」と、なんとなくモヤっとした経験のある方は少なくないと思います。

この記事では、図工(図画工作)の成績が実際には何を見ているのかを、一次資料をもとにやさしく整理します。参考にするのは、文部科学省の学習指導要領と、国立教育政策研究所が出している「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(小学校 図画工作)、そして教職員支援機構(NITS)の学習評価の解説資料です。

先に結論をお伝えします。図工の評価は、「絵の上手さ」を点数にしたものではありません。見ているのは、色や形に気づけているか、自分で考えて表そうとしているか、うまくいかなくても粘れているか。この3つの角度です。

今の通知表は「3つの観点」でできている

2020年度から、小学校のすべての教科が、同じ3つの観点で評価されるようになりました。図工も例外ではありません。

  • 知識・技能
  • 思考・判断・表現
  • 主体的に学習に取り組む態度

それぞれの観点について、A・B・Cの3段階で評価されます。学校によって「◎○△」や「よくできる・できる・もうすこし」など表記は変わりますが、中身は同じです。なお、通知表の「評定」(教科をまとめた総合的な段階)は、小学校では3段階で、低学年ではつけないことになっています。低学年で図工の評定がなくても、心配はいりません。

この3観点は、国語でも算数でも体育でも共通です。図工だからといって特別なものさしが使われているわけではなく、「知識・技能」「考えて表す力」「学びに向かう姿勢」という同じ枠組みを、図工という教科の中身に当てはめている、と考えるとわかりやすいと思います。だからこそ、「絵が上手か下手か」という一本の線では測られていないのです。

観点1 ― 知識・技能

文部科学省が示している図画工作の「知識・技能」の趣旨は、「対象や事象を捉える造形的な視点について自分の感覚や行為を通して理解している」こと、そして「材料や用具を使い、表し方などを工夫して、創造的につくったり表したりしている」ことです。

かみくだくと、「色や形を見て、自分の感覚で感じ取れているか」と「道具や材料を、自分なりに工夫して使えているか」です。ここでいう「技能」は、写真のように正確なデッサンができるかどうかではありません。ローラーを転がしてみる、絵の具を指でのばしてみる、そういう手や体を通した試行そのものが「技能」に含まれます。

求められる深さは学年で上がっていきます。参考資料では、低学年は造形的な視点に「気付いている」、中学年は「分かっている」、高学年は「理解している」と、段階的に言葉が変わっています。つまり、同じ「知識・技能」でも、1年生と6年生では期待されていることが違う、ということです。

ここでいう「技能」は、完成品のうまさではなく、手や体を働かせて試せているか、です。

たとえば、粘土で動物をつくる題材なら、「表面をなめらかにするために指に水をつけてみた」「耳が折れないように太くした」といった工夫が、この観点で見られます。仕上がりがいびつでも、材料の性質に気づいて手を動かしていれば、それは評価されるポイントです。逆に、上手に見えても、先生の見本をそのままなぞっただけで自分の工夫がない場合は、この観点では高くつきにくい、ということもあります。

観点2 ― 思考・判断・表現

趣旨は、「形や色などの造形的な特徴を基に、自分のイメージをもちながら、造形的なよさや美しさ、表したいこと、表し方などについて考えるとともに、創造的に発想や構想をしたり、作品などに対する自分の見方や感じ方を深めたりしている」こと。少し長いですが、大きく二つに分けられます。

ひとつは、「どう描こうかな」「何を使おうかな」と考えて選ぶ力。もうひとつは、友だちの作品や絵本の絵などを見て、「いいな」「どうしてこう描いたんだろう」と感じ、考える力です。後者は「鑑賞」と呼ばれ、図工ではつくることと同じくらい大事な学びとして、評価の対象になっています。

ここで見られているのは、できあがった作品の見ばえよりも、その子が「考えて選んだ跡」があるかどうかです。同じ題材でも、「なんとなく」で進めた子と、「ここは青にしよう、なぜなら夜の海だから」と決めた子とでは、この観点の評価が変わってきます。先生は制作中に「どうしてこの色にしたの?」と声をかけて回りますが、その受け答えも、この観点を見るための大事な材料になっています。

鑑賞の場面では、友だちの作品を見て「ここのぐるぐるが動いてるみたいで好き」と、自分の言葉で感じたことを言えるか、が見られます。「じょうず」「すごい」だけでなく、どこがどうよかったのかを自分なりに言えると、感じ方が深まっている、と評価されます。家で作品集や絵本を見ながら、「この絵、どこが好き?」と聞くのは、そのままこの力を育てる練習になります。

観点3 ― 主体的に学習に取り組む態度

趣旨は、「つくりだす喜びを味わい主体的に表現及び鑑賞の学習活動に取り組もうとしている」こと。国立教育政策研究所の資料では、この観点には二つの側面があるとされています。ひとつは、粘り強く取り組もうとしているか。もうひとつは、自分のやり方をふり返って調整しようとしているか、です。

気をつけたいのは、これが「まじめに授業を受けているか」「先生の言うことをよく聞くか」という、いわゆる態度点ではない、ということです。手をあげた回数や、行儀のよさで決まるものではありません。うまくいかないときにやり方を変えてみる、時間いっぱい手を動かそうとする——そういう、作品と向き合う姿勢を見ています。

「積極的に手をあげる」かどうかではなく、自分の作品と粘り強く向き合えているか、を見ています。

この観点は、内気な子や、静かに黙々とつくるタイプの子が不利になる、というものではありません。声が大きいかどうかは関係なく、消しては描き直す、途中でうまくいかなくなっても投げ出さずに別の方法をさがす、といった姿が見られていれば評価されます。むしろ「早く終わらせたい」で雑に仕上げてしまう子のほうが、この観点では課題が残ることがあります。

図工の授業は、どう進んで、どこで評価されるのか

図工の内容は、大きく「表現」と「鑑賞」に分かれます。表現はさらに、身近な材料で試しながらつくる「造形遊び」と、テーマに沿ってつくる「絵や立体、工作」に分かれます。鑑賞は、作品や絵を見て感じたことを話し合う活動です。

評価は、ひとつの作品の出来を最後に採点する、というより、いくつかの授業(題材)をまとまりとして見て、その中でどの観点がどのくらい育ったかを積み重ねていきます。ある題材では「思考・判断・表現」を重点的に、別の題材では「主体的に取り組む態度」を、というふうに、先生はあらかじめどこを見るかを決めて授業をしています。だから、たった一枚の絵で成績が決まるわけではありません。

「上手さ」だけを見ているわけではない

今の評価は「目標準拠評価」といって、クラスの中で何番目にうまいか(相対評価)を見るものではありません。その学年で目指すことに、その子が届いているかどうかを見ます。ですから、写実的に描くのが得意な子が自動的にA、そうでない子がC、という仕組みにはなっていません。

また、「感性」や「思いやり」といった、点数にしにくいけれど大切な良さは、3つの観点とは別に「個人内評価」として扱われます。これは、観点別評価や評定には表しきれない一人ひとりのよい点や、進歩の様子を見るもので、通知表の所見欄(先生のコメント)などに書かれます。記号が思わしくなくても、所見に「友だちの作品のよさを見つけて伝えていました」と書かれていたら、それはきちんと評価されている、ということです。

観点通知表で見ていること家でなら、こう聞ける
知識・技能色や形への気づき、道具や材料の工夫「この色、どうやって作ったの?」
思考・判断・表現どう表すか考えて選ぶ、鑑賞で感じ方を深める「どこがお気に入り? なんでそうしたの?」
主体的に取り組む態度粘り強さ、やり方をふり返って直す力「うまくいかないとき、どうした?」

通知表の図工が、思ったより低かったら

まず、記号は「今、その学年の目標に向かっている途中」というだけのサインです。その子のセンスや人柄を評価したものではありません。

子どもの前で「Cだったね」と結果から入るのは、できれば避けたいところです。「図工の授業、どんなの作った?」と、中身を聞くところから始めてみてください。図工は週に1〜2時間、45分の授業のなかで見ているので、その日たまたま気分が乗らなかった、道具の準備でつまずいて時間が足りなかった、というだけのこともあります。

気になるときは、担任の先生に「どの観点の、どんな場面を見ての評価ですか」と聞いてみてもいいと思います。責める口調ではなく、「家でどう関わればいいか知りたい」という姿勢で聞けば、具体的な様子を教えてもらえることが多いです。

家でできることは、シンプルです。結果をほめるより、過程を聞く。「じょうずだね」より「くわしく教えて」。そして、持ち帰った作品を、しばらく飾ったり、写真に残したりする。子どもは「見てもらえた」と感じると、次もつくりたくなります。通知表の記号を上げようとするより、図工の時間を嫌いにさせないことのほうが、ずっと先につながります。

もうひとつ、覚えておきたいのは、図工の評価は担任の先生の主観だけで決まっているわけではない、ということです。先生は「この題材ではここを見る」という規準をあらかじめ用意し、制作中のメモや作品、ふり返りシートなど複数の材料を合わせて判断しています。それでも、45分という短い時間で一人ひとりを見るには限界があります。だからこそ、気になったときは家庭から様子を伝えたり、質問したりすることに意味があります。

図工の記号は、その子の「今の一枚」への向き合い方を、3つの角度から写したもの。固定された才能のランクではありません。

よくある質問

Q. 絵を習わせている子のほうが、図工の成績は良くなりますか?
必ずしもそうとはかぎりません。教室で「見本どおりに描く」訓練ばかりしていると、学校が重視する「自分で考えて選ぶ」場面でかえって手が止まることもあります。大事なのは、家でも教室でも、その子が自分の考えで表す経験を積めているかどうかです。

Q. 図工がずっとCです。中学の内申に響きますか?
心配な気持ちはわかりますが、まずは目の前の学期で、どの観点が課題なのかを先生に確認するところからです。多くの場合、「最後まで手を動かす」「感じたことを一言でいいから言葉にする」といった、取り組み方の工夫で変わっていきます。記号を上げることより、図工を嫌いにさせないことを優先してください。

Q. 家では絵を描くのが大好きなのに、学校の図工は「B」です。
よくあることです。学校の図工は、テーマや時間、鑑賞の話し合いなど、家の自由なお絵かきとは条件が違います。「学校の図工がB=絵が好きじゃない」ではありません。家で夢中で描いているなら、その火はしっかり燃えています。

造形クラブでの見方

poppy quest(ぽぴくえ)の造形クラブは、成績をつける場ではありません。ただ、学校の図工が見ようとしている3つの観点と、私たちが大事にしていることは、かなり重なっています。

教室は東京・三軒茶屋のギャラリー。毎週日曜10:00〜11:30、対象は年長から小学生、各回6名の少人数制です。講師は武蔵野美術大学 油絵学科を卒業した現役の油絵作家で、90分を対話30分・制作60分・振り返りに分けて進めます。

「どう描こうか」を一緒に考える時間は、思考・判断・表現にあたります。うまくいかないときに別のやり方を試してみる経験は、主体的に取り組む態度。色や道具を自分の手で確かめる時間は、知識・技能。狙って結びつけているわけではありませんが、子どもが自分の答えをさがす時間は、自然と学校の評価の観点とつながっていきます。上手い下手では評価せず、「正解より、自分の答え」を大事にしています。

振り返りの時間には、「今日いちばん試したことは?」と聞きます。学校の通知表の記号だけではこぼれ落ちてしまう、その子なりの工夫や粘りを、言葉にして本人と保護者に返す。それが、私たちの「評価」の代わりにしていることです。体験レッスンは3,000円(画材費込み)、詳しくは造形クラブのページをご覧ください。

まとめ ✨️

図工の通知表は、絵の巧拙を採点したものではありません。「色や形に気づき、自分で考えて表し、粘り強く取り組めているか」を、3つの角度から見たものです。学年が上がるにつれて求められる深さは変わり、点数にしにくい良さは所見欄で拾われます。

記号がどうであれ、子どもが「つくるの楽しかった」と言えているなら、いちばん大事なところは育っています。

poppy questでは、通知表の記号に一喜一憂しなくていいように、お子さんが何を考え、どこで粘ったのかを、毎回の振り返りで言葉にしてお伝えします。「家でどう声をかけたらいいか分からない」というご相談も歓迎です。お気軽にご相談ください。

poppy quest(ぽぴくえ)造形クラブ

学校でも、おうちでもない。
三軒茶屋のギャラリーにある、ひみつきち。
子どもの「これが好き」が見つかる、もっと絵が好きになる場所です。

毎週日曜、上手さだけでは評価しません。
誰かの正解より、自分の答えを探す旅へ。
武蔵野美術大学 油絵学科卒の現役作家が、
6名までの小さな輪のとなりで、一緒に手を動かし伴走します。

  • 毎週日曜 10:00〜11:30
  • 年長〜小学生
  • 各回6名の少人数制
ぽぴくえ造形クラブについて

つくる、つながる、わたしらしくいきる。

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