中学受験と、絵を描く時間|習い事をいつまで続けるか

中学受験を考え始めると、今ある習い事をどうするかが、必ず話題にのぼります。絵の教室は続けるのか、塾が本格化する前に整理するのか。本人は描くのが好きで、やめたいとは言っていない。だからこそ、「受験優先で全部やめさせるべきなのか」「息抜きに一つくらい残したほうがいいのか」と、親のほうが揺れてしまう——。そんなご家庭を、よく見かけます。
先にお伝えしておくと、この記事は「絵は受験の息抜きに効くから続けよう」と勧める立場でも、「受験に関係ないからやめよう」と促す立場でもありません。続ける意味と、やめる選択の両方をならべて、そのご家庭とお子さんが納得して決められるように、材料を整理していきます。どちらを選んでも、それが本人と話し合って決めたものなら、間違いではありません。
受験期、習い事はいつまで? ― 目安として
ダイヤモンド教育ラボの「中学受験で習い事はいつまで続ける?」という記事で、中学受験カウンセラーの佐藤麻依子さんは、学年別の目安を挙げています。要約すると、小学4年生は「多くても2つの習い事に絞る」、小学5年生は「どうしても辞めたくないという1つに絞るとよい」、小学6年生は「勉強だけに集中する環境づくりが大切」。判断のポイントとしては、「本人の意思を尊重すること」と「スケジュール的にキツくなってきた時」の2つを挙げています。
ただし、これはあくまで一般的な目安です。通う塾の宿題量、通塾日数、子どもの体力、家庭の方針によって、無理のないラインは変わります。5年生でも週2の習い事を続けられる子もいれば、4年生でもう1つに絞ったほうがいい子もいます。学年の数字を額面どおりに受け取らず、わが子のスケジュールに当てはめて考えてください。
絵の教室について言えば、選択肢はおおまかに次の3つです。どれが正解ということはなく、その時期の生活と本人の気持ちで選びます。
| 選択肢 | 向いているとき | 気をつけること |
|---|---|---|
| これまでどおり続ける | 塾の負荷がまだ軽く、本人が強く続けたいとき | 学年が上がったら早めに見直す前提で |
| 頻度を落として続ける | 絵の時間は残したいが、毎週は厳しいとき | 「行けなかった」が続く前に、先に減らす |
| いったん離れる | 本人が勉強に集中したいと言う、体力的に限界のとき | 「受験の間だけ」と期限をつけ、戻れると伝える |
「息抜きになる」を、売り文句にしない
「絵を描く時間は受験のストレス解消になる」と、よく言われます。実際、勉強づめの毎日のなかで、週に一度、手を動かして頭を空っぽにできる時間が支えになっている子はいます。それは本当です。
ただ、「息抜きになるから続けるべき」と大人が理由づけをしてしまうと、絵の時間まで“受験のための道具”になってしまいます。効率よくリフレッシュできているか、という目で見られると、子どもはそれを感じ取ります。そして、「息抜きのはずなのに楽しめていない」と本人が思うと、今度はそのことに罪悪感を持ってしまう。せっかくの時間が、かえって重荷になりかねません。
絵を描く時間は、受験に役立つから価値があるのではなく、その子がその時間を大事に思っているなら、それだけで続ける理由になります。逆に、本人が「今は絵より勉強に集中したい」と言うのなら、その気持ちを尊重して、いったん離れるのも、まっとうな選択です。
続けるなら、「形を変えて」
「続けたい」となったとき、これまでどおり毎週フルで通うのが難しければ、頻度を落とすという方法があります。隔週にする、月1回にする、長期休みのあいだだけ通う。受験期は、時間割そのものが変わるので、習い事の“重さ”も軽くしておくほうが現実的です。
おすすめは、「今週は行けなかった」が積み重なる前に、最初から少ない頻度に切り替えておくことです。毎週の予定なのに月の半分しか行けない、という状態が続くと、行けないこと自体がストレスになり、絵の時間が「気が重いもの」に変わってしまいます。はじめから月1回、と決めておけば、その1回を純粋に楽しみにできます。「行けなかった」を数えるより、「行けた」を楽しみにできる頻度に、先に下げておく。これが、受験期に習い事を残すコツです。
実際、受験勉強の合間に手を動かす時間があったことで、「机に向かうだけの毎日」から少しだけ息がつけた、とふり返る子もいます。一方で、準備と移動の負担が重く、やめてから気持ちが楽になった、という子もいます。どちらも本当のことで、どちらになるかは通ってみないと分かりません。だからこそ、決め打ちせず、その時々で調整できる形にしておくのがよいのだと思います。
教室に通う回数を減らすかわりに、家で「15分だけスケッチする」を習慣として残す、という手もあります。道具を出しっぱなしにできる場所を一角つくっておくと、机に向かう合間に、ふっと手が伸びます。ノートの端に落書きをするだけでも、線を引く感覚は保てます。「ちゃんと描かなきゃ」と気負わず、消しゴムのかすを払うくらいの軽さで続けるのがコツです。
頻度を落とすときは、家族のあいだで「今は月1回のペース」とはっきり共有しておくと、子どもが「サボっている」と感じずにすみます。減らすことは後ろめたいことではなく、時期に合わせた調整なのだ、という空気をつくっておいてください。
やめるなら、「戻れる」と伝えて
「受験のあいだはやめる」と決めた場合も、伝え方で子どもの受け取り方は変わります。「もうやめ」と言い切るより、「受験が終わったら、また通えるからね」と一言そえてください。完全にゼロにするより、「受験の間だけお休み」と期限をつけて離れるほうが、あとで戻りやすくなります。
そして、それまでの作品や道具は捨てないでおいてください。受験が終わったあと、糸が切れたようにぼんやりしてしまう子は少なくありません。そういうときに、「自分には好きなことがある」「あの場所に戻れる」と思えることは、思っている以上に支えになります。合格・不合格にかかわらず、受験のあとには「次に何をよりどころにするか」という時間が必ず来ます。そのときのために、絵という戻り先を残しておく、という考え方です。
離れているあいだ、まったく絵に触れさせない必要はありません。美術館に行く、画集を眺める、旅先でスケッチする。教室に通わなくても、「見る」「感じる」のかたちで細くつないでおくと、再開したときの入りがスムーズです。
低学年のうちの経験は、後で効く(控えめに)
「低学年で絵や造形をやっておくと、受験に有利」といった言い方をするつもりはありません。そんな直接的なつながりはありませんし、そう思って通わせると、お互いに苦しくなります。
ただ、控えめに言えることはあります。「自分で何をつくるか決める」「うまくいかなくても別のやり方を試す」「なぜそうしたのかを言葉にする」——こうした経験は、受験勉強で必要になる粘りや、記述問題で自分の考えを書く力と、地続きの部分があります。とくに、絵の振り返りで「ここは、こうしたかったから」と説明してきた子は、作文や記述で「自分はこう考える」と書くことに、あまり抵抗を感じないことがあります。
もちろん、これは「だから絵をやらせるべき」という話ではありません。過度な期待は禁物ですが、低学年で好きなことに打ち込んだ時間が、まったくの無駄になることはない、というくらいに受け取ってもらえればと思います。「受験に効くかどうか」という物差しだけで習い事を測ると、子どもの世界はどんどん狭くなります。効くか効かないかで測れないものにも、その子を支える力がある、という前提は持っておきたいところです。
家庭で話すときのこと
先ほどの記事で、佐藤さんは「十分に子どもの意見を聞き、親の意見もしっかりと子どもに伝え、お互いが納得のいくまで話し合うことが重要」と述べています。親が一方的に「受験だから全部やめ」と決めると、子どもは反発しますし、しぶしぶ従っても、どこかにしこりが残ります。
話すときは、通告ではなく相談のかたちにします。「これから塾が増えると、時間が足りなくなりそうなんだ。絵はどうしたい?」と、状況を共有したうえで、本人に考えさせる。子どもが「続けたい」と言ったら、まずその気持ちを受けとめる。そのうえで、「じゃあ、毎週は難しいかもしれないから、月1回にするのはどう?」と、現実的な落としどころをすり合わせていきます。
ちょっとした言い回しの違いが、子どもの受け取り方を変えます。
- 「受験なんだから、もうやめなさい」→「受験が終わるまで、絵とどう付き合うか一緒に考えよう」
- 「絵なんて描いてる場合じゃないでしょ」→「今は勉強が大変な時期だから、絵は少しペースを落とそうか」
- 「やめたら二度と通えないからね」→「受験が終わったら、また戻ってこられるよ」
同じ「頻度を落とす」「いったん離れる」でも、前者のような言い方だと、子どもは「好きなものを取り上げられた」と感じます。後者なら、「一緒に考えてくれている」と受け取れます。結論が同じでも、そこに至る言葉が、受験期の親子関係に残ります。
「続ける」か「やめる」かの二択で迫らず、そのあいだの選択肢を一緒に探す。この話し合いのプロセス自体が、受験期に親子の信頼をつなぐ時間にもなります。
造形クラブの場合 ― 月1回から
poppy quest(ぽぴくえ)の造形クラブは、毎週日曜10:00〜11:30が基本ですが、月1回から通えるプランもあります。受験期に頻度を落として続けたい、というご相談に対応できます。プランの詳しい内容は造形クラブのページをご覧ください。
教室は東京・三軒茶屋のギャラリー。対象は年長から小学生、各回6名の少人数制で、講師は武蔵野美術大学 油絵学科を卒業した現役の油絵作家です。90分を対話30分・制作60分・振り返りに分けて進めます。少人数なので、久しぶりに来た子にも「前はこういうのが好きだったね」と、こちらから会話の糸口を出せます。ブランクがあっても、また話しながら始められる場です。
上手い下手で評価しないので、「しばらく描いていなくて下手になった」と気にする必要はありません。久しぶりに来ても、その日の「描きたい」から始めれば大丈夫です。実際、受験期は月1回だけにして、終わってから毎週に戻した子もいますし、「受験の間はお休みします」とはっきり区切って離れ、終わってから戻ってきた子もいます。お休みにキャンセル料はかかりません。
どの通い方を選んでも、こちらから「もっと来たほうがいい」と急かすことはしません。受験というご家庭の大きな時間のなかで、絵をどう置いておくか。その置き方を、一緒に考える相手だと思っていただければと思います。頻度を減らしたい、しばらく止めたい、といったご連絡も、気をつかわずにしていただいて大丈夫です。生活が変わる時期に合わせて形を変えるのは、当たり前のことだと考えています。
よくある質問
Q. 受験が終わってから始めるのでは、遅いですか?
遅くありません。絵や造形は、始める年齢が結果を大きく左右するものではありません。受験が一段落してから、あらためて「やってみたい」と思ったときが、その子にとってのちょうどいいタイミングです。
Q. 本人は「続けたい」と言うのですが、明らかに時間が足りていません。
まずは頻度を落とす提案をしてみてください。それでも回らないようなら、「今は無理をせず、受験が終わったら再開しよう」と、期限を区切って一緒に決めます。本人が納得して選んだ「お休み」は、押し付けられた「やめ」とは、あとの気持ちが違います。
Q. 息抜きにしては、絵は準備や片づけが大変で、かえって負担では?
その感覚は正しいです。だからこそ「息抜きだから続けるべき」と決めつけないほうがいい、というのがこの記事の立場です。本人にとって、その手間を上回る楽しさがあるかどうか。それは本人にしか分かりません。聞いてみてください。
まとめ ✨️
受験と絵の時間は、「どちらが大事か」で比べるものではありません。時期によって、置き方を変えていくものです。続けるなら形を変えて、隔週や月1にする。やめるなら「戻れる」と伝えて、期限つきのお休みにする。どの道を選ぶかは、本人と話して決める。学年ごとの目安は参考になりますが、最後はわが子のスケジュールと気持ちが基準です。
絵を「息抜き」として消費するのでも、「無駄」として切り捨てるのでもなく、その子の一部として、受験期のあいだどう置いておくかを一緒に考える。それが、いちばん後悔の少ない向き合い方だと思います。
poppy questでは、受験を考えているご家庭に、続ける・頻度を落とす・いったん離れる、のどれも選べるように、月1回からの通い方もご用意しています。今すぐ決めなくても、「受験が近づいてきたけれど、どうしよう」という段階でのご相談で大丈夫です。お気軽にご相談ください。
poppy quest(ぽぴくえ)造形クラブ
学校でも、おうちでもない。
三軒茶屋のギャラリーにある、ひみつきち。
子どもの「これが好き」が見つかる、もっと絵が好きになる場所です。
毎週日曜、上手さだけでは評価しません。
誰かの正解より、自分の答えを探す旅へ。
武蔵野美術大学 油絵学科卒の現役作家が、
6名までの小さな輪のとなりで、一緒に手を動かし伴走します。
- 毎週日曜 10:00〜11:30
- 年長〜小学生
- 各回6名の少人数制
つくる、つながる、わたしらしくいきる。
poppy quest

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