読書感想画、どう描き始める?「心が動いた一行」から

二学期になると、読書感想文とならんで「読書感想画」の課題が出る学校があります。本を読んで、心に残った場面を絵にする。作文が苦手な子にとっては絵のほうが取り組みやすいこともありますが、いざ画用紙を前にすると「何を描けばいいのかわからない」と手が止まってしまうことも少なくありません。この記事では、描き始めるまでの助け方を中心に考えます。
よくあるつまずきは、「好きな場面を選びなさい」と言われて、かえって選べなくなることです。物語全体が好きだったり、逆にどこも強く印象に残っていなかったり。そこで提案したいのが、「好きな場面」ではなく「心が動いた一行・言葉」から入るという方法です。場面より小さい単位のほうが、子どもは思い出しやすいことがあります。
読書感想画は、国語と図工が交わる課題です。文章を読んで受け取ったものを、色や形に置きかえる。だから、いきなり絵の技術の話をする前に、「その子が本のどこに反応したか」を一緒に探すところから始めると、描く中身が決まってきます。反対に、中身が決まらないまま「大きく描きなさい」「ていねいに塗りなさい」とだけ言っても、手は動きません。
読みながら「線を引く」「付箋を貼る」
できれば、読んでいる最中に手を動かしておくのがおすすめです。自分の本なら、心が動いたところに薄く線を引く。図書館の本なら、小さな付箋を貼る。「泣きそうになった」「こわかった」「うれしかった」と一言そえておくと、あとで見返したときに気持ちがよみがえります。読書感想画の描き方を紹介する記事でも、印象に残った場面や言葉をメモしておくことが最初のステップとして挙げられています(artwave「【小学生向け】読書感想画の描き方とコツまとめ」)。
読み終わってから「どこが心に残った?」と聞いても、「わすれた」と返ってくることはよくあります。記憶が新しいうちに、付箋一枚分の手がかりを残しておく。それだけで、あとの作業がぐっと楽になります。親が読み聞かせをしているなら、子どもの表情が動いた瞬間をこちらが覚えておいて、あとで「あそこ、どきどきしてたね」と伝えるのもいい方法です。
「一行」から場面を立ち上げる
心が動いた一行が決まったら、そこから絵にする場面を組み立てます。たとえば「その手はあたたかかった」という一行なら、誰と誰の手なのか、どこでのことか、まわりに何があったか、と質問を重ねていきます。子どもが答えるうちに、背景や登場人物の位置が見えてきます。一行という点から、場面という面へ広げていくイメージです。
このとき、必ずしも「その一行の瞬間」を描かなくてもかまいません。その言葉を読んで頭に浮かんだイメージ、感じた色、思い出した自分の経験。そうしたものが混ざっていて大丈夫です。読書感想画は場面の再現ではなく、「その子の中で起きたこと」を描くものだからです。
逆に、いくつも場面が浮かんでまとまらない子には、「いちばん誰かに見せたいのはどれ?」と聞くと絞りやすくなります。選ぶ基準を「上手に描けそうか」ではなく「伝えたいか」に置くと、その子らしい一枚になります。
構図と色の決め方を、そっと手伝う
場面が決まったら、画用紙にいきなり描く前に、小さな紙でざっくり下描きをすると安心です。人物を大きくするのか、風景を広く見せるのか。紙のどこに主役を置くのか。コンクール向けの解説では、画面いっぱいに大きく描かれた作品が目にとまりやすいとされていますが(西日本読書感想画コンクール)、賞のためというより、「描きたいものが小さくなりすぎない」ための目安として使うといいと思います。
色については、「その場面はどんな色だった?」と聞くのがいちばんです。夜の話なら暗い色、あたたかい場面なら黄色っぽい色、と子どもなりのイメージが出てきます。実際の色と違っても止めないでください。かなしい場面を青一色で塗る、うれしい場面を虹色にする。色は、見たままではなく感じたままでいいというのが、この課題のおもしろさです。
顔を大きく描くのが難しい子には、後ろ姿や横顔、影で表す方法もあると伝えてあげてください。表情をうまく描けないことが理由で「もういい」となってしまうのは、もったいないことです。人物が難しければ、その子が見ていた景色を主役にするという手もあります。
親のサポートはどこまで?
手伝いすぎると子どもの絵ではなくなり、放っておくと手が止まる。その境目は迷いますが、目安は「言葉のやりとりまでは手伝い、鉛筆と絵の具は本人が持つ」あたりです。何を描くか、どう並べるかを一緒に相談するのは、むしろ良い関わりです。一方で、輪郭をなぞってあげたり、塗りを代わったりすると、完成しても本人の満足は薄くなります。
出来上がった絵に対して「上手だね」「もっとこうしたら」と言う前に、まず「どの場面?」「ここは何をしているところ?」と聞いてみてください。説明を聞いてから見ると、さっきまで気づかなかった工夫が見えてきます。評価より先に、その子の説明を聞く。それだけで、子どもは「見てもらえた」と感じます。
もし「へただから出したくない」と言い出したら、無理に説得しなくてかまいません。「先生は上手さを見ているんじゃなくて、あなたがこの本のどこを面白いと思ったかを知りたいんだと思うよ」と伝えると、少し肩の力が抜けることがあります。
本選びのヒント
読書感想画に向く本は、「絵にしたくなる場面がある本」です。冒険や自然、動物、乗り物、不思議な出来事が出てくる話は、頭の中に画が浮かびやすいです。逆に、会話やきもちの動きが中心の静かな物語は、感想文には向いても感想画では手こずることがあります。ただ、静かな話でも「一行」から入れば描けるので、絶対の基準ではありません。
すでに読んで気に入っている本があるなら、新しい課題図書を無理に読ませるより、その本で描くほうがうまくいきます。好きな本には、心が動いた場所がすでにたくさんあるからです。何度も読み返している本は、細部まで覚えているぶん、絵に描く手がかりも多くなります。
造形クラブでの向き合い方
poppy questの造形クラブでは、はじめの三十分を対話にあてています。読書感想画のような「お題のある課題」でも、いきなり描き始めず、まず何を感じたのかを言葉にするところから始めます。教室は東京・三軒茶屋のギャラリー、毎週日曜の午前十時から十一時半、年長から小学生まで各回六名の少人数制です。
講師は武蔵野美術大学の油絵学科を出た現役の油絵作家です。子どもが「この場面を描きたい」と言ったとき、上手に描く方法を教えるのではなく、「その場面のどこが心に残ったの?」ともう一段深く聞きます。描く技術より、何を描くかがはっきりしているほうが、絵は前に進むからです。上手い下手で評価せず、「正解より自分の答え」を大切にしています。
少人数なので、一人ひとりの本の話をゆっくり聞けます。同じ課題図書でも、心が動いた一行は子どもによってまるで違います。その違いこそが、その子の絵の出発点になります。急かさず、選ぶところから一緒にいることを大事にしています。
よくある質問
「下描きから何時間もかかってしまう」というご相談があります。完璧な下描きを目指すと終わりません。下描きは「だいたいの位置決め」と割り切って、多少ずれていても本描きに進んでよい、と伝えてあげてください。描きながら直す前提でいると、手が動きやすくなります。
「兄弟で同じ本を読んだのに、まったく違う絵になった」というのは、むしろ良い兆候です。同じ物語から違うものを受け取っている証拠で、それぞれの感じ方が絵に出ています。比べて優劣をつけず、「二人はここが違ったね」と面白がってあげてください。
「絵の具がにごってしまう」という技術的な悩みには、水をこまめに替えること、明るい色から塗ること、の二点だけ伝われば十分です。細かい技法は、描く回数を重ねるうちに自然と身についていきます。最初から全部をきれいに、と求めないでください。
学年別の、声のかけ方の目安
学校によっては、感想文と感想画のどちらかを選べたり、両方が課題になったりします。両方やる場合、先に感想画に取り組むと、絵を描く過程で場面を細かく思い出すので、そのあとの作文が書きやすくなることがあります。順番も、その子のやりやすさで決めてかまいません。
同じ「心が動いた一行から」という入り方でも、学年によって手伝う量は変わります。低学年は、そもそも「どの一行か」を自分で見つけるのが難しいことが多いので、読み聞かせのときに親が候補をいくつか覚えておいて、「この場面と、この場面と、どっちが心に残った?」と二択や三択で聞くところから始めると選びやすくなります。
中学年になると、自分で付箋を貼れる子が増えます。ここでの親の役割は、選んだ一行から「どんな絵になりそうか」を一緒に想像することです。「その場面、まわりに何が見えてた?」「時間は昼? 夜?」と質問して、頭の中の映像をはっきりさせる手伝いをします。描く内容が決まれば、あとは本人に任せて大丈夫です。
高学年は、「うまく描けないから恥ずかしい」という気持ちが強くなる時期です。技術的な不安には「後ろ姿でもいい」「一部分だけ大きく描いてもいい」と逃げ道を示しつつ、「この課題は、あなたがこの本をどう読んだかを見るものだよ」と、目的を言葉にして伝えると、取り組みやすくなります。
描き始めても手が止まったとき
場面が決まって描き始めても、途中で止まってしまうことがあります。多くは「思っていたように描けない」と感じた瞬間です。そんなときは、いったん本物の絵から離れて、口で説明してもらうといいです。「今、何を描こうとしてたの?」と聞くと、頭の中のイメージがもう一度はっきりして、手が動き出すことがあります。
それでも進まないときは、紙を変えて小さく描いてみる、色から先に置いてみる、と手順を入れ替えます。順番に決まりはありません。人物が難しければ背景から、背景が難しければ一番描きたいものから。「正しい描き順」より「その子が動き出せる入り口」をさがすほうが、結果として絵は進みます。
手伝う側が焦らないことも大事です。親が「まだ終わらないの」とそわそわしていると、子どもはそれを感じ取って、雑に仕上げて終わらせようとします。「時間はあるよ」という空気でそばにいるだけで、子どもは落ち着いて向き合えます。口を出さずに同じ部屋にいる、というくらいの距離がちょうどいいこともあります。
「もうやめたい」と本気で言うときは、無理に続けさせず、日をあけるのも手です。一日おいてから見ると、「ここ、思ったより描けてる」と本人が気づくこともあります。締め切りに余裕をもって始めておくと、この「時間をおく」という選択肢が使えます。前日にあわてて始めると、逃げ道がなくなってしまいます。
仕上げと、そのあとのこと
塗りに入ると、「はみ出した」「色がにごった」で止まってしまう子がいます。はみ出しは、上から濃い色でふちどると気にならなくなりますし、にごりは、乾いてからその上に明るい色を重ねれば立て直せます。失敗したと思った場所からでも、たいてい先に進めます。そう知っているだけで、手が止まりにくくなります。
背景をどうするか迷う子も多いです。真っ白のままだと落ち着かない、でも何を描けばいいかわからない。そんなときは、その場面の「空気の色」を一色、うすく全体に塗るだけでも絵がまとまります。夜なら紺、朝なら水色、体育館の中ならうす茶色。細かい背景を描き込まなくても、色があるだけで場面が伝わります。
描き終えた絵は、提出する前に一度、家族の前で「発表」してもらうといいです。どの場面か、なぜその場面を選んだか、どこを工夫したか。人に話すことで、自分がその本から何を受け取ったのかが、本人の中でもはっきりします。うまく話せなくても、話そうとすること自体に意味があります。
コンクールに出す場合でも、結果が返ってくるのはずっと先です。出したこと、最後まで描ききったことを、その場でいったんねぎらってあげてください。賞のあるなしより、「一冊の本と時間をかけて向き合った」という経験のほうが、あとに残ります。
描いた絵は、写真に撮ってから返却を待つと安心です。学校によっては展示のあと戻ってこないこともあります。その年にどんな本を読んで、どんな場面を選んだか。写真が残っていると、何年かあとに見返したときに、その子の読書の記録にもなります。
色えんぴつで描く指定のときは、強くこすらず、うすい色を何回か重ねると深みが出ます。クレヨンなら、下にべつの色をしいてから上を削る方法もあります。画材が変わると勝手も変わるので、本番の前に同じ画材で一度試しておくと、当日あわてずにすみます。
まとめ ✨️
読書感想画は、上手に描く課題ではなく、「その子が本のどこに反応したか」を絵にする課題です。だから、描き始める前の言葉のやりとりがいちばん大事になります。心が動いた一行を手がかりに、場面をふくらませ、感じたままの色を選ぶ。親は、相談相手にはなっても、鉛筆は本人に持たせる。その距離感でいると、その子だけの一枚になります。
poppy questでは、お題のある課題でも「まず感じたことを言葉にする」ところから一緒に始めています。読書感想画の描き始めでつまずいている、というご相談も含めて、お気軽にご相談ください。
poppy quest(ぽぴくえ)造形クラブ
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子どもの「これが好き」が見つかる、もっと絵が好きになる場所です。
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