手作りのプレゼントを贈るということ|秋の贈りもの、子どもと作る

九月には敬老の日があります。保育園や幼稚園、学童で「おじいちゃん・おばあちゃんに何か作ろう」という時間があり、家でも「今年はどうしようか」と考える方が多い時期です。この記事は敬老の日を入口にしていますが、伝えたいのは日付の話ではなく、「誰かのために何かを作る」という時間が子どもにとってどういう意味を持つか、ということです。時期がずれて読んでいる方にも役立つ内容にしたつもりです。
手作りのプレゼントというと、つい「見栄えがするもの」「祖父母が実際に使えるもの」を考えがちです。もちろんそれも喜ばれますが、子ども側の体験として大事なのは、作っているあいだ、その人のことを思い浮かべている時間そのものです。おじいちゃんは何色が好きだったか、この前会ったときに何を話したか。手を動かしながら、相手を思い出す。その時間に価値があります。
だから、上手にできたかどうかは、実はそれほど重要ではありません。ゆがんだ花でも、はみ出した色でも、「これはおばあちゃんの畑のトマト」と本人が言うなら、それは立派な贈りものです。受け取る側も、たいてい仕上がりより「作ってくれた」という事実に反応します。
「誰かのために作る」と、何が変わるのか
自分のために作るときと、誰かのために作るときとでは、子どもの中で少し違うことが起きます。相手を想定すると、「この人は何が好きか」「どうやって渡そうか」「受け取ったらどんな顔をするか」と、自分の外側に意識が向きます。これは、ふだんの図工の時間にはあまり使わない頭の働かせ方です。
完成したものを手渡して、相手が笑ったり、飾ってくれたりする。その反応を受け取る経験は、「自分の作ったものが誰かの役に立った」という手ごたえになります。作る喜びに、渡す喜びが重なる。この二つがそろうと、子どもは次も「誰かに作りたい」と思うようになります。
逆に注意したいのは、大人が完成度を求めすぎて、途中から手を出しすぎてしまうことです。きれいに仕上げたい気持ちはわかりますが、そうすると「大人が作ったもの」になり、子どもの中の「贈った」という実感が薄れてしまいます。多少不格好でも、本人が最後まで手を動かしたことのほうが、あとに残ります。
家でできる、シンプルな贈りものアイデア
ここからは、材料が少なくてすみ、低学年でも取り組みやすいアイデアを三つ紹介します。いずれも敬老の日にかぎらず、誕生日や「ありがとうを伝えたいとき」に応用できます。全国の子育て情報サイトでも、手形アートや折り紙の花束、フォトフレームなどが定番として紹介されています(All About「敬老の日は手作りプレゼントを子どもと一緒に!」)。
アイデア1|手形・指スタンプの「ありがとうカード」
厚めの紙を二つ折りにしてカードの形にします。絵の具を手のひらや指先につけて、ぺたぺたと押します。手形を花や木に見立てて、まわりに葉っぱや実を指スタンプで足していくと、それらしくなります。乾いたら、子どもが自分でメッセージを書きます。字がまだ書けなければ、口で言った言葉を大人が代筆して、名前だけ本人が書く形でも十分です。
手形は「その年の手の大きさ」の記録にもなります。毎年同じ時期に作ると、祖父母にとっては成長の記録が一枚ずつ増えていくことになります。凝った工作ができなくても、これなら二歳、三歳から参加できます。
アイデア2|折り紙の花束
折り紙でチューリップやコスモスなど、簡単な花をいくつか折ります。緑の折り紙を細く巻いて茎にし、画用紙に貼って束ねると花束になります。難しい折り方は必要ありません。むしろ、同じ花をいくつも折るうちに手つきが安定してくるので、低学年の練習にも向いています。折る枚数を「おじいちゃんの歳の数だけ」と決めると、数える活動にもなります。
色を選ぶときに「おばあちゃん、何色が好きだったかな」と一度立ち止まる。この小さな問いかけが、「相手のために作る」という体験の芯になります。わからなければ「じゃあ聞いてみよう」と電話するのも、それ自体が贈りものの一部です。
アイデア3|写真を入れる「かざりフレーム」
厚紙を窓の形に切り抜いて、フレームを作ります。表面に、どんぐりや小さな貝がら、ボタン、乾かした花などを木工用ボンドで貼っていきます。後ろに写真を入れられるように、上だけあけてポケットにしておきます。渡したあとで一緒に撮った写真を送ると、二回楽しめます。
貼る飾りは、家にある小さなものでかまいません。大事なのは「これはあの日ひろった貝」といった、本人にとっての意味です。素材集めから始めると、散歩や旅行の思い出ごとフレームに入ることになります。
渡すところまでを、体験にする
作って終わりにせず、「どうやって渡すか」まで子どもに考えてもらうと、体験が完結します。手渡しできるなら、渡すときのひとことを一緒に練習しておく。会えないなら、郵送する封筒に子どもが宛名や絵を描く。渡す瞬間まで含めて、はじめて「贈りもの」になるからです。
渡したあと、祖父母がどんなふうに受け取ったかを、できれば子どもに伝えてあげてください。「玄関に飾ってくれてるって」「電話でずっとその話してたよ」。その報告が、子どもにとってのいちばんのごほうびになります。反応が返ってくることで、作る意味が実感に変わります。
もし相手が遠方だったり、事情があって渡せなかったりする場合は、無理に敬老の日にこだわらなくて大丈夫です。「今度会ったときに渡そう」ととっておく、身近な誰かに贈り先を変える。誰かを思って作った時間そのものは、渡すタイミングがずれても消えません。
造形クラブでの考え方
poppy questの造形クラブは、東京・三軒茶屋のギャラリーで、毎週日曜の午前十時から十一時半に開いています。年長から小学生まで、各回六名の少人数制です。季節の行事にちなんだ制作をするときも、「上手に仕上げる」ことより「誰に、どんな気持ちで」を大事にしています。
講師は武蔵野美術大学の油絵学科を出た現役の油絵作家です。はじめの三十分の対話の時間に、「これは誰にあげるの?」「その人はどんな人?」と聞きながら、作るものの方向を一緒に決めていきます。気持ちを込める時間の長さが、そのまま作品ににじむと考えているからです。上手い下手で評価せず、「正解より自分の答え」を大切にしています。
少人数なので、一人ひとりの「誰にあげたいか」にゆっくり付き合えます。同じ材料でも、贈る相手が違えば、選ぶ色も形も変わってきます。その子だけの理由から作りはじめることを、いちばん大事にしています。
よくある質問
「不器用で、渡せるようなものが作れるか心配」という声があります。贈りものは完成度で測るものではありません。祖父母の多くは、孫が自分のために時間を使ったこと自体を喜びます。むしろ、少しいびつなくらいのほうが「手作りらしくていい」と受け取られることも多いです。
「毎年同じようなものになってしまう」という悩みもあります。それでかまいません。手形カードを毎年もらい続けている祖父母にとっては、その「同じ」が成長の記録になっています。変える必要を感じたら、飾りの素材や渡し方を少し変えるだけで十分です。難易度別のアイデア集(memoco「敬老の日に贈る手作りのプレゼントアイデア&作り方」)なども参考にしながら、その年の子どもに合う無理のないものを選んでください。
「渡す相手がいない場合は?」という質問もあります。祖父母に限らず、いつもお世話になっている人、近所の方、家族の誰かでもかまいません。「ありがとうを伝えたい人に、手を動かして何かを作る」こと自体が体験なので、相手は柔軟に考えて大丈夫です。
年齢別の、無理のない関わり方
この「誰かのために作る」という考え方は、敬老の日にかぎった話ではありません。母の日や父の日、友だちの誕生日、お世話になった先生へのお別れの色紙。人生のいろいろな場面で、子どもは誰かのために作ることになります。その最初のいくつかを、家庭でゆっくり経験しておけると、あとがずっと楽になります。
同じ「手作りの贈りもの」でも、できることは年齢で変わります。二歳から四歳ごろは、手形やスタンプ、シールを貼る、クレヨンでぐるぐる描く、といった「押す・貼る・こする」動作が中心になります。完成の形は大人がある程度用意しておき、子どもは色や模様の部分を担当する、という分け方が現実的です。
五歳から小学校低学年になると、はさみやのり、折り紙をひととおり使えるようになります。この時期は「何を作るか」を本人に選ばせる余地を増やすと、贈りものへの気持ちが強くなります。作り方の手順を三つくらいに区切って伝え、ひとつずつ確認しながら進めると、最後まで自分でやりきれます。
小学校中学年以上になると、相手の好みを考えて材料や色を選ぶ、メッセージを自分の言葉で書く、といったことができます。ここまでくると、大人は道具の準備と安全の見守りに徹して、内容にはあまり口を出さないほうが、その子らしい贈りものになります。失敗して作り直すことも、経験のうちと考えてください。
どの年齢にも共通するのは、「時間に余裕をもって始める」ことです。前日の夜にあわてて作ると、どうしても大人が手を出すことになり、子どもの体験が薄くなります。二週間くらい前から材料を少しずつ集め、一日十五分ずつ進める。そのくらいのペースだと、子どもも気持ちを込める時間がとれます。
「ありがとう」を言葉にする練習として
手作りの贈りものは、感謝の気持ちを形にして伝える練習の機会でもあります。ふだん、面と向かって「ありがとう」や「大好き」を言うのは、子どもにとって照れくさいものです。カードに一言書く、作品にそえる手紙を考える。作るという作業をはさむことで、その照れが少しやわらぎ、気持ちを表に出しやすくなります。
何を書けばいいかわからない子には、「この前、何をしてもらった?」「どこに行ったのが楽しかった?」と、具体的な思い出を聞いてあげてください。「いつもありがとう」より、「一緒に川に行ったのが楽しかった」のほうが、受け取る側の心にも残ります。ありがとうは、具体的なエピソードとセットになると伝わりやすいものです。
手紙やカードの字は、多少まちがっていても直させないほうがいい、という考え方もあります。消しあとだらけのきれいな字より、勢いのある字のほうが、その子らしさが伝わります。受け取る祖父母も、たいていは完璧な字を求めていません。
贈ったあとに相手から返事や電話が来たら、その場に子どもを呼んで、直接やりとりさせてあげてください。「飾ったよ」「うれしかったよ」という言葉を自分の耳で聞くことが、次に誰かのために何かを作りたい、という気持ちのもとになります。贈ることは、一往復のやりとりで完成します。
渡したあと、続いていくもの
手作りの贈りものは、一度きりで終わらないところがいいところです。祖父母の家に行くたびに、前に作ったものが飾ってある。それを見て「これ、去年ぼくが作ったやつだ」と気づく。自分の手を動かしたものが、誰かの生活の中に居場所をもらっている。その事実は、言葉で「えらいね」と言われるより、ずっと強く子どもに残ります。
毎年続けると、贈るほうも受け取るほうも、それが習慣になります。「今年は何をくれるかな」と楽しみにしてもらえること自体が、子どもにとっては誇らしいものです。負担にならない範囲で、小さくても毎年続けられる形にしておくと、その関係がゆっくり育っていきます。
作ったものを通して、ふだん会えない相手とのやりとりが生まれることもあります。電話で「あの花、何色だった?」と聞かれて答える。手紙の返事を書く。贈りものが、会話のきっかけを作ってくれます。離れて暮らす祖父母との距離を、少しだけ近くしてくれます。
もし相手が体調をくずしていたり、施設で暮らしていたりする場合は、飾りやすさや軽さを優先して考えてください。壁に貼れる薄いカード、ベッドのそばに置ける小さなもの。大きくて立派なものより、いつも目に入るところに置けるもののほうが、喜ばれることが多いです。
贈りものづくりは、悲しい別れの場面でも子どもの支えになります。会えなくなった人へ、手紙や絵を書く。渡せなくても、その人のことを思って手を動かす時間は、気持ちの整理を助けてくれます。贈るという行為には、相手に届けること以上の意味があります。
贈ったものが、思ったほど喜ばれないように見えることもあります。相手が高齢で反応が控えめだったり、その場ではあまり言葉が出なかったり。それでも、あとから「あれ、大事にしてるよ」と人づてに聞くことがあります。反応が小さくても届いていないわけではない、と子どもに伝えてあげてください。
まとめ 🕊
手作りのプレゼントで大切なのは、仕上がりの美しさよりも、相手を思いながら手を動かした時間です。敬老の日はそのきっかけのひとつにすぎず、時期がずれても、贈る相手が変わっても、その価値は変わりません。材料は家にあるもので十分。作って、渡して、反応を受け取る。この一続きの流れを、子どもと一緒に体験してみてください。
poppy questでは、「誰かのために作る」時間を、急かさず、その子の理由から始められるように伴走しています。季節の贈りもの作りや、家庭での関わり方の相談も含めて、お気軽にご相談ください。
poppy quest(ぽぴくえ)造形クラブ
学校でも、おうちでもない。
三軒茶屋のギャラリーにある、ひみつきち。
子どもの「これが好き」が見つかる、もっと絵が好きになる場所です。
毎週日曜、上手さだけでは評価しません。
誰かの正解より、自分の答えを探す旅へ。
武蔵野美術大学 油絵学科卒の現役作家が、
6名までの小さな輪のとなりで、一緒に手を動かし伴走します。
- 毎週日曜 10:00〜11:30
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poppy quest

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